危険運転致死罪(赤信号を殊更無視)の成立を争ったが、判決では弁護側主張が認められなかった事件
取扱事案
依頼者が、友人らと食事した帰り道に自動車を運転中に、横断歩道を歩行中の被害者をはねて死亡させてしまったという事件でした。
検察官は、事故が起きた際、自動車側の対面信号は赤であったのに、依頼者は赤信号をあえて無視して車を走行させて今回の事故を起こしたとして起訴しました。
依頼者は、信号表示が赤だと明確に認識していた記憶はなかったため、弁護人は、裁判で、危険運転致死罪ではなく過失運転致死罪が成立すると主張しました。
(危険運転致死等、【裁判員裁判】)
結果
判決は、検察官の主張を認めて危険運転致死罪が成立するとした上で、懲役8年を言い渡しました。検察官の求刑は懲役9年、弁護人の科刑意見は4年でした。
依頼者は、事故前後の記憶が非常に曖昧でした。
弁護人は、不明確な記憶に基づく供述調書が作成されるのを防ぐために、依頼者には黙秘することをアドバイスしました。ただ、連日繰り返される取調べの中で、何度か黙秘できなかったことがあり、その様子は録音・録画されることとなりました。
弁護人は、裁判では、できる限り客観的な証拠により判断がなされることを目指し、検察官が請求した多くの供述調書や報告書等の証拠について、不同意(証拠とすることに応じない)の意見を述べました。
その結果、裁判では、事故の目撃者、実況見分等を行った捜査官、速度鑑定を実施した科捜研職員、信号サイクル等を管理する県警本部警察官など多数の証人の尋問が実施されました。
弁護人は、客観的な事実関係を前提とした場合、依頼者が直前の信号を見落としていた可能性が残ることを主張しましたが、判決では受け入れられませんでした。
判決では刑の重さを決める理由として、被害者遺族が厳しい判決を望んでいることや、依頼者が過去にも交通事故を起こしていたことなども挙げられました。