殺人罪で起訴されたが、法定刑の軽い承諾殺人罪の成立が認められた事案
取扱事案
依頼者である妻が、数十年連れ添った夫の首を絞めて殺してしまうという事件でした。
依頼者は、事件の直前に夫と交わした会話の内容などから、夫は、自分と一緒に死ぬことを承諾していると信じ夫を殺害しました。依頼者は自らも自殺を図り重傷を負いましたが、一命を取り留めました。
(殺人罪、一部無罪・認定落ち、執行猶予【裁判員裁判】)
結果
弁護人は事件直後から、依頼者との接見、依頼者や被害者である夫をよく知る家族らとの面会、更に現場となった自宅の訪問等を行い、事件当時までの生活状況や当事者である夫婦の人間性などについて、できる限り理解するよう努めました。
実際の裁判でも、被告人質問や家族の証人尋問を通じて、依頼者の人となりや考え方について、裁判員や裁判官に正しく理解し、かつ共感してもらうことを目指しました。
裁判では、
- 客観的に被害者の承諾があったこと
- 仮に客観的には承諾がなくても、依頼者は承諾があると信じていたこと
をそれぞれ主張しました。
裁判所は、「客観的に被害者の承諾があったこと」については認めませんでしたが、「依頼者は承諾があると信じていたこと」について弁護側の主張を認め、検察官が起訴した殺人罪(法定刑:死刑又は無期若しくは5年以上の懲役)ではなく、承諾殺人罪(同:6月以上7年以下の懲役又は禁錮)が成立すると判断しました。
その上で、事件までの経緯等の事情から、執行猶予が付され、判決の日に依頼者は釈放されました。