破産したら従業員の未払い給料も支払えないのでしょうか。
相談内容
会社を営んでいるが,負債が膨れあがり,これ以上経営を続けていくことが難しい。従業員の給料さえ,支払いを待ってもらっているものが直近3ヶ月分あるが,破産すると従業員にも未払い分の給料を支払ってあげることはできないのか。
結果
1 未払い給料の取り扱い
まず,破産手続開始前3ヶ月間の未払い給料については,破産手続において,財団債権といって,破産手続によらないで随時弁済を受けられる,すなわち最も優先して支払いを受けられる債権のひとつとされています。
ただ,随時弁済を受けられると言っても,弁済の元になるのは破産会社の資産ですので,会社に資産がない場合には,破産手続開始前3ヶ月間の給料であっても実際には支払いを受けられないことになります。また,他に公租公課等の財団債権がある場合,未払給料と案分弁済が行われることになりますので,公租公課の未払いが多い場合にも,管財人が未払い給料を弁済することは難しい場合が多いです。
2 労働者健康安全機構の立替払制度の利用
このような場合には,労働者健康安全機構の立替払制度を使うことになります。
労働者健康安全機構の立替払制度では,退職日より6ヶ月前の日から支払い期限が来ている未払い給料について,破産手続が開始した日から2年以内に請求すると,満額の8割程度が支払われるという運用がなされています(ただし,未払い賃金の総額が2万円未満のときは,立替の対象外となっています。)。
この立替払いを受けるためには,賃金台帳,タイムカード,就業規則などの客観的な資料から,未払賃金の額や就業状況が明らかになっていなければならないので,早期に立替払制度を利用するためには,申立前から,会社サイドでこのような書類を整理していただく必要があります。
破産会社の資産は破産管財人という裁判所から選任された弁護士が管理・処分することになるので,通常は破産管財人がこの手続きを執って,従業員の方の未払い給料分の支払いの手続きを行うことになります。