イギリス刑事法紹介㉖~無意識的行為(automatism)~
2025.03.18ブログ
イギリス法では、何らかの外的要因により非自発的行動に及んでしまった場合には、「無意識的行為(automatism)」として、犯罪の成立が否定されることがあります。
ただし、判例法上、「無意識的行為」は、記憶がなかったり衝動をコントロールできなかったりするだけでは足りず、けいれんや反射など、筋肉のコントロールができないような場合にのみ成立するとされています。そのため、その成立範囲は、非常に狭く考えられているといえます。
そのため、過去の裁判例では、低血糖症で運転する自動車のコントロールを失った事例などであっても身体機能の一定のコントロールはできていたなどとして、「無意識的行為」の成立が否定されています。「無意識的行為」として犯罪の成立が否定されるのは、極めて限定的な状況であることが分かります。
また、「無意識的行為」は、投薬等の外的要因によって引き起こされることが求められていますが、過剰な飲酒や違法薬物の摂取等により引き起こされた場合には、政策的理由により犯罪の成立を否定する事情とはなりません。
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
弁護士/英国弁護士 中井淳一
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★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★