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イギリス刑事法紹介㉑~窃盗罪(theft)~

2024.08.13ブログ

 現在のイギリス法では、the Theft Act 1968において、窃盗罪の基本的な要件が定められており、「人は、永続的に他人から財産を奪う意図を持って、不正に他人の財産を占有した場合に、窃盗罪として有罪となる」(section 1)とされています。
 
 ここでいう「財産(property)」とは、金銭等のすべての財産を含み、無形物(intangible property)も対象になると定められています(section 4)。
 また、「占有(appropriation)」は、借りた物を返さずに処分してしまう場合のように、当初は正当に財産の占有権原を取得し、後になって所有者として当該財産を保管、売却等することも含むとされています。そのため、日本法上は横領罪や背任罪として処罰されるようなケースでも、イギリス法上では窃盗罪として処罰される場合があり得ます。
 
 主観的要件としては、「不正に(dishonestly)」他人の財産を占有することが求められていますが、「不正」の定義については、立法上、消極的な形での定義しかされていません。当該財産について正当な権限を持っている場合や、当該財産の占有について所有者の同意を得ていると誤信した場合などが、「不正ではない」ケースとして例示されていますが(section 2(1))それ以上に積極的な定義はされていません。そのため、この点は、判例法理に大きく委ねられています。
 

また、イギリス法における窃盗罪の法定刑は、最大で7年の拘禁刑とされています。
 

 なお、イギリス法では、不法侵入を伴う窃盗には、「侵入盗(burglary)」という独立の犯罪類型が定められており、その法定刑は、最大で14年の拘禁刑となっており、刑の長期が通常の窃盗罪の2倍となっています。

 

※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。

弁護士/英国弁護士 中 井 淳 一 
https://japanese-lawyer.com/

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★