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「監督者制度の施行開始」

2024.07.30ブログ

2024年6月

弁護士 虫本良和

 

2023年(令和5年)5月10日に成立した「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(令和5年5月17日公布)によって新設された各制度のうち、公布から5年以内に施行予定とされていた、保釈又は勾留執行停止をされた者に対する「監督者制度」が、2024年(令和6年)5月15日から施行されました。

 

刑事裁判手続の実務では、従来から、親族等が被告人の「身元引受人」となり、保釈中の被告人に対する監督を行うことや裁判所へ出頭させることを約束するということがあります。裁判所(裁判官)は、そのような身元引受人になってくれる関係者が存在するということを、保釈を許可する方向の事情として評価することが一般的です。従って、弁護人は、保釈請求を準備するに際しては、関係者を探し出して、身元引受人になってくれるよう依頼するということがよくあります。

 

ただ、今回施行されたのは、身元引受人とは異なり、裁判所が選任し、法律上一定の義務を有する「監督者」という存在を定める新たな制度となります。

監督者が負担することになる具体的な義務として、裁判所は、監督者に対して、被告人と共に公判期日に出頭することや、裁判所が定める事項の報告を行うことを命じることができるとされています(刑訴法98条の4)。

 そして、裁判所は、監督者を選任した場合、これまでも必要とされていた保釈保証金(いわゆる「保釈金」)とは別に、「監督保証金」というものを別途定め、裁判所に納付させなければならないとされています(同法98条の5第1項)。

 監督保証金の額は、監督者の「資産及び被告人との関係その他の事情」を考慮した「相当な金額」とすることが定められています(同2項)が、実際にどれくらいの金額になるかは今後の運用を見守る必要がありそうです。

さらに、裁判所は、監督者が、裁判所の命令に違反した場合には、監督者を解任することができ、その場合には、監督保証金の全部又は一部を没取することができるとされています(同法98条の8)。

 

このように、監督者制度は、身元引受人よりも、相当大きな負担を監督者とされた者に課すものといえます。このような制度が新たに設けられたのは、「人質司法」とも呼ばれる被告人の身体拘束の長期化を解消するためであると考えられます。これまで、身元引受人の存在や保釈保証金の納付を条件とするだけでは、保釈が許可されていなかったようなケースであっても、新たな制度を活用することで、できるだけ早期に身体拘束から解放され、自らの防御を尽くすことができる公正な裁判が実施されるような運用となることが期待されます。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★