Q 刑事施設の被収容者が死亡した場合、遺体や遺品はどのように扱われるのですか
1 刑事施設の被収容者が死亡した場合には、死亡により拘置(勾留)が解かれるので、その遺体や遺品は、引取りを希望する遺族に引き渡されます。
そのことは、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下、単に「法律」といいます。)に規定があります。
2 法律では、刑事施設の被収容者が死亡した場合は、「遺族等に対し、その死亡の原因及び日時並びに交付すべき遺留物・・(中略)・・があるときはその旨を速やかに通知しなければならない。(176条)」と規定され、更に遺品について「死亡した被収容者の遺留物は、・・(中略)・・その遺族等に対し、その申請に基づき、引き渡すものとする。(55条1項)」と規定されています。
実際、筆者が扱った案件(有罪判決に対し控訴中、東京拘置所に勾留されていた依頼者が、早朝に病死した案件)でも、依頼者の死亡発覚後すぐに遺族(父親)への電話連絡があり、遺体や遺品の引取等の意向についての確認がありました。
3 もっとも、刑事施設の被収容者の中には、様々な事情により遺族となり得る家族や親族との交渉が完全に途絶えて連絡が取れなくなっていたり、連絡はとれるものの遺族が遺体等の引き取りを拒むケースが、少なくありません。
そのような場合、遺品は国庫に帰属するものとして取り扱われます(55条2項,3項)。
一方、遺体については、法律が「その死体の埋葬又は火葬を行う者がないときは、・・(中略)・・その埋葬又は火葬は、刑事施設の長が行うものとする。(177条1項)」と規定しているとおり、死亡した際に収容されていた刑事施設の責任において、きちんと火葬された上で、埋葬されます。
この場合に埋葬される場所として、各地に、法務省が管理する納骨堂がありますが、東京拘置所内で死亡した場合は、雑司ヶ谷霊園内の法務省が管理する納骨堂(管理事務所の裏手にある建物)に埋葬されているようです。
縁があり、筆者も一度訪ねてみましたが、ひっそりと、人目を避けるようなたたずまいがとても印象的でした。
2024年7月
弁護士 金 子 達 也
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★