「執行猶予に関する刑法改正の施行に向けて」③
2024年5月
弁護士 虫本良和
前回までのコラム(※「執行猶予に関する刑法改正の施行に向けて①」※「執行猶予に関する刑法改正の施行に向けて②」)で、執行猶予制度に関する改正法の概要及び同改正の施行日(2025年(令和7年)6月1日)を説明しました。
補足して、新たな制度の具体的な適用場面を整理した「経過規定」を確認しておきます。
刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律 (第448条) 新刑法第二十七条第二項から第六項まで及び第二十七条の七第二項から第六項までの規定は、新刑法第二十五条又は第二十七条の二(略)の規定による刑の全部の執行猶予の言渡し又は刑の一部の執行猶予の言渡しが刑法等一部改正法の施行の日(以下「刑法等一部改正法施行日」という。)以後にされた場合について、適用する。 |
上記の条文によれば、刑法27条2項から6項等の「効力継続期間」による全部(又は一部)執行猶予取消に関する規定は、前刑に対する全部執行猶予又は一部執行判決の言渡しが、改正刑法の施行日(2025年6月1日)以降になされた場合に適用することとされています。
従って、前刑の言渡しが、2025年5月31日以前であれば、その判決で言い渡された判決に付された執行猶予については、改正前と同じように、新たな罪の裁判で有罪判決が確定する前に、執行猶予期間が満了すれば、前刑の執行猶予は取り消されることはないということになります。
弁護人としては、改正法の施行日に近い時期に執行猶予が見込まれる判決の宣告期日があるという場合には、この経過規定の存在についても特に留意する必要がありそうです。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★