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「執行猶予に関する刑法改正の施行に向けて」②

2024.05.14ブログ

2024年5月

弁護士 虫本良和

 前回のコラム(執行猶予に関する刑法改正の施行に向けて」①)で紹介したとおり、2022年(令和4年)に成立した執行猶予制度に関する改正法の施行日が、2025年(令和7年)6月1日からと定められています。

 執行猶予制度について、前回のコラムで紹介した規定のほか、以下の改正がなされています。

 

③ 執行猶予期間徒過の効果に関する規定の新設(刑法27条2項~6項)

 改正前は、前刑の執行猶予判決の猶予期間中に、別の新たな罪を犯してしまったという場合、新たな罪の裁判で有罪判決が確定する前に、執行猶予期間が満了したというケースでは、前刑の執行猶予は取り消されることはありませんでした。

 しかし、改正後は、執行猶予期間が経過する前に、新たな罪について起訴されていれば、新たな罪の判決が確定する前に執行猶予期間が満了した場合でも、前刑の執行猶予を取り消すことができるという規定が新設されました。

 この場合の、前刑の執行猶予期間満了後から執行猶予の取り消しができなくなるまでの期間を「効力継続期間」と呼称することになりました(改正刑法27条2項)。

 なお、新たな罪の判決の内容によって、前刑の執行猶予の取消の効果が異なっていることにも注意が必要です。

 具体的には、新たな罪についての判決が、

 ・拘禁刑以上の場合→原則執行猶予は取り消さなければならない(必要的取消)(4項)

 ・罰金刑の場合→執行猶予は取り消すことができる(裁量的取消)(同5項)

となっています。

 ただし、新たな罪の判決が拘禁刑以上の場合であっても、執行猶予期間経過後の「別の」新たな罪と併合されて、その罪と併せて新たな罪の判決を言い渡すという場合には、例外的に、情状を考慮して前刑の執行猶予を取り消さないことができる(4項但書)とされています。

 弁護人としても、上記のような細かい法律の規定を正確に理解して、依頼者に説明しておく必要があります。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★