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イギリス刑事法紹介⑪~刑罰の種類~

2023.10.03ブログ

 イギリスの刑事裁判において、被告人が公訴事実を認めている場合、または、陪審が有罪の評決を出した場合には、量刑を定める手続へ移行することになります。
 量刑の決定は、職業裁判官のみが関与して行い、陪審は量刑決定には関わりません。

 日本法との比較におけるイギリス刑事法の量刑の特長の1つは、比較的軽微な事案において、量刑上の幅広い選択肢が用意されているという点です(なお、以下の説明は、18歳以上の成人に対する刑罰に関するものであり、18歳未満の者に対する刑罰には必ずしも当てはまりません。)。
 イギリスにおいては、比較的軽微な犯罪に対して、日本でも多く見られる罰金刑(fine)の他に、community order という命令が裁判所から出されることがあります。
 community order とは、有罪判決を受けた人物に対して懲役刑を科さず、社会内での更生を促す処分です。具体的には、無償での労働やリハビリプログラムへの参加、住居制限等の命令が科されることになります。
 
 このように多様性のある刑事処分が用意されていることは、刑罰を科す場面において、再犯防止のための必要な処分をより具体的に考えていく上で意義が大きいといえます。特に、日本の刑事司法では、薬物依存や窃盗症により再犯を繰り返してしまう人物に対し、懲役刑による十分な治療を伴わない強制的な刑罰か、執行猶予判決による治療に関する司法上の手当のない処分の二者択一になってしまう場面があります。
 治療やリハビリを義務づけ、その懈怠に対する司法上の関与が認められる刑罰が存在することで、そのような二者択一を避けられる可能性があります。
 

※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。

弁護士/英国弁護士 中井淳一 
https://japanese-lawyer.com/ 

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★