性犯罪関係の法改正⑤「記録媒体の証拠能力に関する特則」
2023年8月
弁護士 虫本良和
2023年(令和5年)6月16日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」が成立して、性犯罪に関するいくつかの改正がなされました。
本改正の1つとして、被害者などの事情聴取の内容を記録した録音・録画記録媒体について、これらを証拠として取り調べることを認める場合の特則規定が新設されました(刑事訴訟法321条の3)。
具体的には、
①性犯罪の被害者
②児童福祉法違反、児童ポルノ等の被害者
③犯罪の性質、供述者の年齢、心身の状態、被告人との関係その他の事情により、更に公判準備又は公判期日において供述するときは精神の平穏を著しく害するおそれがあると認められる者
について、
ア 供述者の年齢、心身の状態その他の特性に応じ、供述者の不安又は緊張を緩和することその他の供述者が十分な供述をするために必要な措置
イ 供述者の年齢、心身の状態その他の特性に応じ、誘導をできる限り避けることその他の供述の内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置
が「特に採られた情況」が認められる場合であり、「聴取に至るまでの情況その他の事情を考慮し相当と認めるとき」との要件を満たす場合に限り、証人尋問(主尋問)を行う代りに、当該供述者にかかる事情聴取の内容を記録した録音・録画記録媒体を証拠として取り調べることを認めるという内容となっています。
ただし、証人審問権の重要性に鑑み、この場合でも、あくまで記録媒体の取調べで代替できるのは主尋問だけであり、当該供述者に対する反対尋問を行う機会を別途与えなければならないとされています。
本改正は、公布日(2023年(令和5年)6月23日)から6月以内に施行される予定です。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★
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