性犯罪関係の法改正③「性交同意年齢、性交等の定義、配偶者間の確認規定、面会要求等の罪の新設」
2023年8月
弁護士 虫本良和
2023年(令和5年)6月16日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」が成立し、性犯罪に関するいくつかの重要な改正がなされました。上記改正法は6月23日に公布されています。
本改正には、以下のような内容も含まれています。
1 性交同意年齢の引上げ
従来13歳以上とされていた、いわゆる「性交同意年齢」が、16歳以上に引き上げられました(176条3項、177条3項)。従って、16歳未満の者に対して、わいせつな行為を行った場合には、その他の要件(コラム①参照)を問うまでもなく、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が成立することとなります。
ただし、相手が13歳以上16歳未満の場合には、行為者より5年以上前の日に生まれたこと(年齢差5歳差以上)が要件となっています。
2 「性交等」の定義の変更
従来、「性交等」とは「性交、肛門性交、口腔性交」を指すと定義されていましたが、今回の改正により、それらに加えて「膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」についても「性交等」に含まれることとなりました。これらに該当する場合には、不同意わいせつ罪ではなく、不同意性交等罪として処罰されることとなります(177条1項)。
3 配偶者間において不同意性交等罪が成立することの明確化
従来から、たとえ夫婦間であっても、要件に該当すれば、強制わいせつ罪や強制性交等が成立するという解釈が通説とされていましたが、今回の改正により、不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪の条文に「婚姻関係の有無にかかわらず」との文言が明記され、配偶者間でも同罪が成立することが文言上も明確化されました(176条1項、177条1項)。
4 面会要求等の罪の新設
16歳未満の者に対して、わいせつの目的で、面会を要求することや、実際に面会をすることを犯罪として処罰する規定が新設されました(刑法182条)。
具体的には、
わいせつの目的で、16歳未満の者に対して、
① 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求
② 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求
③ 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求
した場合には、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が科されることになりました。
また、上記の面会要求の罪を犯し、わいせつの目的で、16歳未満の者と面会をした場合には、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科されることになりました。
ただし、行為の相手が13歳以上16歳未満の場合には、行為者より5年以上前の日に生まれたこと(年齢差5歳差以上)が要件となっています。
これらの各改正は、公布日(2023年(令和5年)6月23日)から20日経過後(同年7月13日)から施行されています。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★
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