覚醒剤取締法違反・大麻取締法違反事件の判決結果
2023年6月
弁護士 菅 野 亮
覚醒剤を使用したり、所持した場合、覚醒剤取締法違反となり、通常は、逮捕、勾留された上で、起訴されます。
覚醒剤取締法違反の令和3年における起訴率は、75.4%であり、起訴猶予率は、9.2%となっています。令和4年犯罪白書によれば、「覚醒剤取締法違反の起訴猶予率は、道交違反を除く特別刑法犯全体と比較して顕著に低かった」とされています。
大麻取締法違反の場合、起訴率は、49.8%、起訴猶予率は、32.8%ですから、覚醒剤取締法違反と大麻取締法違反を比較すると起訴猶予率がかなり異なる状況で、それだけ覚醒剤取締法違反に対しては検察官が厳しく対応していることがうかがえます。
覚醒剤取締法違反で裁判を受けた場合の結果は、次のようになっています。
●覚醒剤取締法の地方裁判所における判決状況
1 全部執行猶予(38.4%)
・1年以上2年未満(26.6%)
・2年以上3年以下(11.8%)
2 一部執行猶予(13.4%)
3 全部実刑(48.2%)
・1年以上2年未満(16.7%)
・2年以上3年以下(22.7%)
・3年を超え5年以下(6.9%)
覚醒剤を使用して裁判を受ける場合、初犯であれば、多くの事件で、検察官が懲役1年6ヶ月を求刑し、裁判所は、全部執行猶予付の判決をしています。
もっとも、覚醒剤使用事案は、覚醒剤の依存性・常習性により、一度、有罪判決を受けた後に再度覚醒剤を利用してしまい、実刑となる場合も多いです。依存症は、病気であり、治療が必要であることは裁判の現場でもある程度理解されていますが、裁判の量刑としては、繰り返し使った場合には、実刑の年数も増えていくことが多いです。
また、覚醒剤取締法違反で実刑判決を受けた入所受刑者の年齢層は、次のとおり、各年代ごとに均等に存在している状況です。
●覚醒剤取締法違反 入所受刑者の年齢(令和3年)
男性 | 30歳未満 | 6.2% |
30~39歳 | 18.6% | |
40~49歳 | 35.0% | |
50~64歳 | 34.2% | |
65歳以上 | 5.9% | |
女性 | 30歳未満 | 11.5% |
30~39歳 | 32.5% | |
40~49歳 | 31.8% | |
50~64歳 | 22.7% | |
65歳以上 | 1.5% |
大麻取締法違反で裁判を受けた場合の結果は、次のようになっています。
● 大麻取締法違反の地方裁判所における判決状況
1 全部執行猶予(86.3%)
2 一部執行猶予(1.5%)
3 全部実刑(12.2%)
大麻取締法違反は、覚醒剤取締法違反に比べ法定刑が軽いということも影響していると思いますが、裁判結果をみても、全部執行猶予率が86.3%と極めて高いことがうかがえます。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★
以上