イギリス刑事法紹介⑨~伝聞証拠~
イギリスの伝統的な判例法では、伝聞証拠(hearsay evidence)は、原則として証拠能力が認められず、例外的な場合に証拠として許容されるに留まっていました。
Criminal Justice Act 2003の制定により、伝聞例外の法理が立法化され、伝聞証拠が証拠として許容される場合が以下のとおり定められました。
① 制定法に基づく例外(証人の出廷不能、自己矛盾供述等)
② 判例法に基づく例外(自白、非言語的表現等)
③ 当事者の合意に基づく例外
④ 正義の利益(interests of justice)に基づく例外
このうち、①~③については、日本の刑事訴訟法においても、ほぼ類似した伝聞法則に対する法規制が存在するといえます。
特徴的なのは④で、他の類型ではカバーされない伝聞証拠について、伝聞例外として採用する広い裁量を裁判所に与えているといえます。
ただし、裁判所が裁量を行使するに当たって考慮すべき事項は法定されており、証拠としての重要性や証拠が作成された状況、証人尋問による立証ができない理由などが考慮されることになります。
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
弁護士/英国弁護士 中井淳一
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★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★