「オンライン接見」の実現に向けて②
弁護士 虫本良和
オンライン接見実現の必要性については「「オンライン接見」の実現に向けて①」でもご紹介したとおりです。
この点、現在の実務においても、弁護人が、被疑者・被告人が身体拘束を受けている刑事施設に直接行かなくても連絡を取ることができる方法は存在しています。
そのひとつは、法務省が実施している電話による外部交通の制度です。この制度は、平成19(2007)年3月に法務省と日弁連の申し合わせにより、試行的に運用されているもので、東京拘置所、立川拘置所、横浜拘置支所、大阪拘置所、京都拘置所、神戸拘置所、福岡拘置所、仙台拘置支所及び札幌拘置支所の9カ所のみで実施されています。この制度は、弁護人等が、各拘置所等と電話接続された検察庁や法テラスの施設(アクセスポイント)に行き、同施設内の電話を利用して、拘置所等にいる被疑者・被告人と音声通話をするという「アクセスポイント方式」が採用されています。
もうひとつは、各都道府県警が実施している電話連絡制度です。この制度は、平成25(2013)年12月から、試行的に運用されているもので、令和3(2021)年度時点で、北海道、岩手県、群馬県、三重県、奈良県、岡山県、徳島県、熊本県及び沖縄県の9つの地域において、「アクセスポイント方式」により実施されています。現在のアクセスポイントは、県庁所在地など「中心部」の警察署が指定されていることが多く、そこから「遠方」の警察署に留置された被疑者・被告人と電話で会話できるという仕組みになっています。
このような現行の電話連絡制度は、遠隔地の被疑者・被告人と即時・簡便に意思疎通ができるという意味で重要な連絡手段のひとつではあります。しかしながら、設置場所が全国のごく一部に限られていることや、アクセスポイントから留置場所への「一方通行」の連絡しかできないことなど、あまりにも利用できる場合が限られており、制度として不十分であることは明らかです。さらに、実施方法についても、前日までの予約が必要とされること、一回の通話時間が短時間に限られていること、会話の秘密性確保が徹底されていないこと等、弁護人の援助を受ける権利の保障という点からみたときに、改善を要する問題がいくつもあります。また、音声だけの通話では、証拠資料の確認も十分に出来ませんし、お互いの表情をみながらコミュニケーションをとることもできません。
犯罪の嫌疑を受けた人が、この国のどこで身体拘束を受けた場合であっても、早期かつ適時に、弁護士から助言を受けられるシステムを整備するという視点で考えたとき、現行の電話連絡制度を広げる或いは「マイナーチェンジ」するという発想では不十分であり、オンライン接見という新たな制度を作り上げ、全国に整備していくという意識が必要であると考えます。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★