ストーカー規制法はどのような法律なのか⑤ ~他の法令等を駆使した対策~
令和5年1月
弁護士 金子達也
1 ストーカー規制法以外の罰則による被害届
加害者がストーカー行為をした場合に、さらに、他の刑罰法規に触れる犯罪行為をも行う場合があります。そのような場合には、警察に被害届を出すのも効果的です。
その際には、可能な範囲での証拠保全(電話の録音や防犯ビデオ撮影等)をしておくことも効果的です。
例えば、次のような刑罰法規による被害届が考えられます。
① 加害者が、被害者の「見張り」や「つきまとい」行為のために、被害者の自宅やその敷地等に無断で入り込んだ場合には、更に住居(建造物)侵入罪(刑法130条:3年以下の懲役又は10万円以下の罰金)で処罰される可能性があります。
更にその際に、ガラスを割ったりした場合には、器物損壊罪(刑法261条:3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料)で処罰されることがあります。
② 加害者が、被害者の自宅やその勤務先に「無言電話」を繰り返した場合には、その時間帯や回数によっては、更に業務妨害罪(刑法233条・234条:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)で処罰される可能性があります。
③ 加害者が、被害者の「名誉を害する事項を告げた」場合には、その具体的態様によっては、更に名誉毀損罪(刑法230条:3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)で処罰される場合があります。
2 民事手続の利用
ストーカー被害をやめさせるために、面会要求の禁止等の仮処分申立て(民事保全法23条2項)、損害賠償請求訴訟の提起(民法709条)などを行うことも一定の効果がある対策として考えられます。
3 弁護士名による警告書の送付
弁護士名でストーカー行為をやめるよう警告書を発することも一定の効果がある対策として考えられます。
なお、前記2、3の方法は、警察に相談・被害届を出すより穏便で加害者を刺激しない方法と思われがちですが、警察への被害届と比較して強制力(効果)が乏しい反面、加害者の性格によっては、かえって問題を複雑にしてしまう危険もあります。
これらの方法を使うかどうかを考える際には、弁護士や警察官に相談して助言を得た方が良いでしょう。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★