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ストーカー規制法はどのような法律なのか③ ~法改正の経緯~

2023.03.28ブログ

令和5年1月
弁護士 金 子  達 也

1 ストーカー規制法が制定された経緯
  ストーカー規制法は、桶川ストーカー殺人事件を契機に、平成12(2000)年5月に成立しました。
  この事件は、平成11(1999)年10月、埼玉県桶川市内で女子大学生が以前の交際相手から殺害されたという痛ましい事件ですが、犯人からの度重なるストーカー行為の相談に対する警察の無責任な対応も厳しく批判され、大きな社会問題となりました。
  そして、この事件に対する反省が機運となって新たに制定されたのが、ストーカー規制法でした。

2 ストーカー規制法改正の経緯
  その後、ストーカー規制法は、時代の変化と要請に応じて、「つきまとい等」行為に電子メールの送信が含まれるなど規制対象の拡大、被害者に禁止命令等の申立権を認めるなどの被害者の権限強化、禁止命令等の手続簡略化による機動性強化などの改正が行われてきました。
  
その中で、時代の変化に伴うストーカー行為の多様化に法規制が追い付かず問題となったのが、GPS機器を用いたストーカー行為(被害者の自動車等にGPS機器を密かに取り付けて位置情報を取得する行為)に対する規制の在り方でした。
  このようなGPS機器を用いた位置情報取得行為は、現行法では「位置情報無承諾取得等」に当たる規制対象となっていますが、かつてのストーカー規制法では、明文上の規制対象からは外れていました。
  そこで、捜査機関は、GPS機器を用いた位置情報取得行為は「見張り」行為であるとの見解をとって、この種事案を積極的に検挙・起訴してきたのですが、裁判所での有罪・無罪の判断は大きくわかれ、結局、最高裁判所も「GPS機器による位置情報取得行為は「見張り」には当たらない」との判断を示しました(最高裁第一小法廷R2.7.30判決)。
  その後、この最高裁判決を受けた国会等での議論がなされて、令和3(2021)年5月にストーカー規制法が改正され、「位置情報無承諾取得等」を規制対象とする法2条3項が新設されたのです。

3 現状など
  このように、桶川ストーカー殺人事件を未然に防げなかった反省から生まれたストーカー規制法ですが、その後も、残念ながら、不幸なストーカー殺人事件は後を絶ちません。
  そして、令和5(2023)年1月16日にも、福岡市内の路上で女性が元交際相手に殺害されるという、痛ましいストーカー殺人事件が起こってしまいました。
  この事件では、福岡県警も被害者に対する相応の援助と保護対策を講じていたと報じられていますが、結果的に殺人事件を防げなかったことになります。
  この事件に対する反省と検証に基づくストーカー規制法の改正の動きにも、注目していきたいと思います。

  次回はストーカー被害に遭ったときの対処法について解説します。  

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★