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イギリス刑事法紹介④~保釈制度全般~

2022.12.20ブログ

 司法統計によれば、近年の日本における第一審の保釈率は、概ね30%程度で推移しています。これは、勾留されている被告人のうち、およそ7割は保釈されないまま判決を迎えることを意味します。

 一方、イギリスでは、クラウン・コート(日本でいう地方裁判所に近いイメージで、軽微でない事件を取り扱う。)における起訴後の勾留率は、最近5年間で35~40%程度となっており(Criminal Justice Statistics quarterly)、身体拘束を受けた状態で刑事裁判を受けることを強いられる被告人の割合が日本と比較して低くなっています。
 
 イギリスにおいても、保釈を認めるための法令上の要件だけを見れば、日本法と比較して必ずしも緩やかとはいえません。例えば、イギリス法における保釈の中心的な要件は、被告人が、①収容に応じない、②保釈中に犯罪をする、③事件の証人に接触する、と裁判官が信じるべき実質的な根拠があることとされています(Part 1 of Schedule 1 to Bail Act 1976)。
 したがって、日本における保釈率の低さは、法文上の問題よりも、実務的な法解釈として、保釈の要件を厳しく捉えすぎている点にあると考えられます。既に広く議論されているところですが、特に、「罪証隠滅のおそれ」(刑事訴訟法89条4号)については、実務上、緩やかに解釈されて安易に認められる傾向にあり、適切な保釈制度の運用のために再考が必要といえるのではないでしょうか。
 

※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。

弁護士/英国弁護士 中井淳一 https://japanese-lawyer.com/

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★