イギリス刑事法紹介③~弁護人の取調べ立会~
日本では、現在、弁護人の取調立会権に関する議論が進んでいます。歴史的に、密室での取調べにより多くのえん罪が生まれており、取調べの適正化のためには弁護人の立会が不可欠と考えられます。
弁護人の取調べ立会権に関する議論では、諸外国の制度が参照されることも多いため、イギリスにおける弁護人の取調べ立会について紹介します。
イギリスの刑事実務では、多くの事件で、被疑者に対する取調べは、警察署で一度だけ実施されます。この取調べについては、弁護人(Solicitor)による立会が認められています。
取調べ立会時の弁護人(Solicitor)の役割については、以下のように規定されています。
弁護人は、明確化のために取調べに介入し、不適切な内容の質問や不適切な方法による質問に異議を述べ、被疑者に対して特定の質問に答えないようにアドバイスし、被疑者が希望する場合にはさらなる法的助言を与えることができる。(Paragraph 6D of the Notes for Guidance to Code C, PACE 1984)
このように、イギリスの刑事法においては、警察での取調べにおいて、弁護人が単に立会をするだけでなく、質問内容等に応じて積極的に介入・発言していくことが想定されています。
また、そのような役割を弁護人が果たす前提として、取調べの前の段階で、警察から弁護人に対して、捜査で得られた証拠に対して一定の情報開示が行われるのが通常です。これにより、弁護人が取調べ立会時により実効的な役割を果たすことが担保されているといえます。
以上
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
弁護士/英国弁護士 中井淳一 https://japanese-lawyer.com/
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★