コラム 改正刑法③「再度の執行猶予の条件について」
2022年8月
弁護士 虫本良和
令和4年6月13日、刑法等の一部を改正する法律(以下「本法」という。)が成立しました。本法の主な内容として、再度の執行猶予の条件に関する改正があります。
執行猶予(刑法25条以下)とは、裁判の判決で懲役刑や禁錮刑を言い渡す際、「情状」(刑の重さを決める際に考慮する一切の事情といった意味合いです。)によって、刑の執行(刑務所に入ること)を1年から5年の範囲で猶予することができるというものです。
執行猶予が付けられることによって、有罪判決を受けた場合でもすぐに刑務所に行く必要はなく、定められた執行猶予期間中に別の罪を犯すことなく生活すれば、言い渡された刑を受ける必要はなくなるというものです。この制度があることによって、刑罰による威嚇効果を与えながら、社会の中で更生を目指すことができると言われています。
現行の法律では、この執行猶予の期間中に、さらに別の罪を犯してしまったという場合、新しい罪の判決の際にもう一度執行猶予を付けることできるのは、「一年以下の懲役又は禁錮の言渡し」が相当な事案で、かつ「情状に特に酌量すべきものがあるとき」に限られていました(刑法25条2項本文)。本法は、この再度の執行猶予を認める際の条件を、現行の「一年以下」から「二年以下」に引き上げる改正を行いました。
また、現行の法律では、保護観察付執行猶予(執行猶予の期間中、保護観察官や保護司の指導や監督を受けるという条件が付けられるもの。)の期間中に別の罪を犯してしまった場合には、再度の執行猶予を付することはできないとされていましたが、本法により、可能となりました。
今回の改正によって、これまで服役を余儀なくされていた方に対しても、執行猶予制度を柔軟に活用することで、社会の中で更生できる機会が与えられるようになることが期待されます。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★