コラム 改正刑法①「拘禁刑の新設」
2022年7月
弁護士 虫本良和
令和4年6月13日、刑法等の一部を改正する法律(以下「本法」という。)が成立しました。本法の主な内容として、「拘禁刑」の新設があります。
本法では、これまで懲役刑(刑法12条)と禁錮刑(刑法13条)に分かれていた自由刑(受刑者の身体を拘束することで自由を奪う刑罰の種類)の区別を廃止して、新設した拘禁刑に一本化するものです。
この規定は、公布から3年以内に施行される予定です。
改正の理由として、禁錮刑と懲役刑の選択基準が不明確であるとの指摘がなされていたことや、そもそも禁錮刑が選択される件数が極めて少ないことなどが挙げられています。加えて、懲役刑と禁錮刑の主な違いは、服役中の刑務作業を義務付けるか否かという点であるところ、刑務作業が任意とされている禁錮刑でも、実際には大半の受刑者が志願して作業を行っているという実態があることも理由とされていました。
例えば、平成28年に刑が確定した受刑者の割合は、禁錮受刑者は56人、懲役受刑者2万406人であり、自由刑に占める禁錮刑の割合は0.3%程度でした。そして、平成29年7月末日現在で、禁錮受刑者134人のうち117人(全体の87.3%)が、志願して刑務作業に従事しているとの報告がなされていました(法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第1分科会第1回会議議事録)。
本法では、自由刑を拘禁刑に単一化するとともに、拘禁受刑者に対し、「改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」との規定が設けられました。
この点について、日弁連は会長声明を公表しており、受刑者の改善更生と円滑な社会復帰が促進されることが期待されるが、作業や指導は、いかに有用でも、受刑者が自発的に向き合うことがなければ十全な効果は得られないことから、懲罰の威嚇による矯正処遇の強制ではなく、受刑者の自発性や尊厳を重視した運用が必要であると述べています。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★