コラム 改正少年法施行④「特定少年に関する推知報道の解禁」
弁護士 虫 本 良 和
2022年(令和4年)4月1日から施行されている改正少年法の主な改正ポイントとして、推知報道(実名報道)の解禁の特例を設けたことが挙げられます。
少年法61条は、「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」として、推知報道の禁止を定めています。
これは、健全育成という少年法の目的を根拠とするものであり、実名報道は、少年の更生や社会復帰を阻害するおそれが大きいことに鑑み、事件内容に関わりなく一律に禁止することを法が定めているものです。
改正少年法は、特定少年について、少年法61条が適用されず、推知報道の禁止が解除される特例を認めています。但し、捜査段階や略式罰金(非公開の簡易な手続きで罰金刑を科すもの)の場合には、原則通り推知報道は禁止されており、特定少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合だけが特例の対象となっています。
しかしながら、推知報道は、ひとたび行われれば、インターネットへの掲載等によって少年のプライバシーが半永久的に公開され、事後的にこれを復旧することは不可能です。また、少年法には、公訴が提起された場合でも、裁判所の判断で再び家庭裁判所に移送し、非公開の審判を受けさせるという仕組みも存在します(少年法55条)。これらの点も踏まえて、推知報道の解禁の是非については、少年の健全育成及び更生の妨げにならないように十分に配慮した慎重な検討がなされるべきであると考えられます。この点は、衆議院及び参議院の法務委員会でも附帯決議がなされて確認されています。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★