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刑事事件と千葉県,千葉市における指名停止措置について

2021.12.31ブログ

1 指名停止とは
 千葉県,千葉市といった地方公共団体は,建設工事等を民間企業に発注しています。そして,地方公共団体は,その定めるルールに従って,一定の条件がある場合には,企業を公共事業に関して一定期間の指名停止処分とします。指名停止とは,入札応募資格を停止することです。
 千葉県は,建設工事に関しては,「千葉県建設工事請負業者等指名措置要領」で指名停止等のルールを定めています。
 例えば,上記要領によれば,「虚偽記載」(千葉県が発注する工事の請負契約に係る一般競争及び指名競争において,競争参加資格確認申請書,競争参加資格確認資料その他の入札前の調査資料に虚偽の記載をし,工事の請負契約の相手方として不適当であると認められるとき。)をした場合,当該認定をした日から1か月以上6か月以内の指名停止となります(千葉県建設工事請負業者等指名措置要領・別表第1・1)。

2 刑事事件を起こした場合と指名停止の関係
 法人あるいは法人代表者等が刑事事件を起こしたからといって,当然に指名停止になるわけではありません。
 千葉県建設工事請負業者等指名措置要領によれば,刑事事件に関する事項として,
① 贈賄(別表第2,1及び2)
② 独占禁止法違反行為(別表第2,3及び4)
③ 公契約関係競売妨害又は談合(別表第2,5及び6)
④ 建設業法違反(別表第2,7及び8)
⑤ その他(別表第2,9及び10)
 が定められています。
 上記のとおり,贈賄や独占禁止法違反行為等の公正な取引を妨害するような犯罪を起こした場合に指名停止となることになります。ただし,その他として「別表第1及び前各号に掲げる場合のほか,代表役員等が禁こ以上の刑もしくは罰金刑を宣告され,建設工事等の契約の相手方として不適当であると認められるとき」も,指名停止になるとされていますので,上記以外の罪名の罪であったとしても,代表者等が罰金刑以上の刑に処せられる場合,指名停止措置が執られうることに注意が必要です。
 なお,代表者だけでなく「代表者等」となっており,代表者以外の役員及び従業員が逮捕された場合であっても,指名停止になり得ます。

3 千葉県における指名停止の実例
 千葉県のホームページでは,指名停止業者一覧が記載されています。
 その内容を見ますと,①従業員が機械の操作ミスにより部材を倒し負傷するという事故を発生させたにもかかわらず,労働基準監督署へ遅滞なく報告しなかったことから,労働安全衛生法違反により略式起訴されて罰金刑に処せられたケース,②労働者の危険を防止するための措置を執らなければならないのに,その措置を講じていなかったことから,労働安全衛生法違反により略式起訴され,罰金刑に処せられたケース,③警視庁に引き渡した電線を保管場所から盗んだとして,窃盗の疑いで逮捕されたケース等が報告されています。
 従業員が窃盗事件で逮捕されただけで常に指名停止になるものではないと思われますが,上記③の例のように,受注した工事現場で窃盗事件を犯すなどした場合には,指名停止になっています。

4 千葉市における指名停止の実例
 千葉市においても,建設工事に関する指名停止の要件は,「千葉市建設工事請負業者等指名停止措置要領」に定められており,千葉県の定める内容と同様の基準となっています。
 千葉市の指名停止措置内容を見ると工事の遅延・不備が多いのですが,①贈賄容疑で逮捕されたこと,②独占禁止法違反容疑で刑事告発されたこと,③労働安全衛生法違反で略式命令をうけたこと,④有印私文書偽造,同行使,詐欺の容疑で逮捕されたこと,⑤建造物侵入の容疑で逮捕され懲役10か月,執行猶予3年の有罪判決を受けたこと,⑥金融庁が有価証券報告書等の虚偽記載による金融商品取引法違反で課徴金納付命令を決定したこと等が公表されています。
 指名停止にならないためには,関係諸法令の理解を深める研修を実施したり,法令上の問題が生じていないか,社内のコンプライアンス体制を整備する必要があります。会社の業務以外で従業員が起こした事件によっても会社が不利益を受けることはあり得ますので,リスク管理が必要です。

以上 

2022年1月   
弁護士 菅 野  亮 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★