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企業向けパワハラ防止研修の講師を行いました

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2021年11月  
弁護士 菅 野  亮

企業向けパワハラ防止研修を担当しました。

令和2年6月1日施行の労働施策総合推進法により,事業主は,いわゆるパワハラ防止に必要な措置を講じることが義務付けられています。パワハラとは,「同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されていますが,指導とパワハラの線引きが難しいなどという声があることも事実です。

厚生労働省の定める指針等においても,精神的な攻撃がパワハラに当たることは当然のこととされていますが,他方で,「①遅刻や社会的ルールを欠いた言動が見られ,再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすることや,②その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して,一定程度強く注意すること」は精神的な攻撃にはあたらず,パワハラではないとされています。

そこで,今回の研修でも,いくつかの裁判例を素材に,どういった行為が裁判例において,パワハラとなるのかを説明し,言葉の1つ1つだけでなく,従業員間の関係性や相手に対するリスペクトが重要であるということを説明させていただきました。

例えば,福岡高判平成20年8月20日では,複数の上司の発言がパワハラかどうかが争われ,上司Aの発言は違法とされ,上司Bの発言は,違法とは判断されませんでした(かなり微妙な事例と思われます。)。Bの発言内容だけみると,これがパワハラだと認定されてもおかしくないものですが,平素の被害者とBとの関係性等から,これは親しい部下と上司の間の軽口であって,他人に心理的負荷を過度に蓄積される行為ではないと判断されています。

A:「お前は,三曹だろ。三曹らしい仕事をしろよ。」
    「お前は,覚えが悪いな。」
    「バカかお前は。三曹失格だ。」

B:「ゲジ2が2人そろっているな。」
    「お前はとろくて仕事ができない。」
    「自分の顔に泥を塗るな。」
      (その他,焼酎を持参するよう強要)

従来のパワハラ類型に加えて,個の侵害をしていないかについても,時代によって人権意識が変化し,判断基準も変容するので,注意が必要です。指針においては,次のようなケースが個の侵害に該当するとされています。

①労働者を職場外でも継続的に監視したり,私物の写真撮影をしたりすること。
②労働者の性的指向・性自認や病歴,不妊治療等の機微な個人情報について,当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。

パワハラにしても,セクハラにしても,職場環境を害し,結局は,企業にとってもマイナスとなりますので,ハラスメント防止対策をしっかりとっていくことは企業の重要なテーマであると思われます。

以上

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★