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自動車事故(死亡事故)に関する量刑傾向(その1)

2021.05.19ブログ

2021年5月
弁護士 菅 野  亮

1 交通事故は,日常生活の中で,加害者にも,被害者にもなり得るものです。今回は,当事務所で相談を受けることも多い,交通事故のうち,死亡事故に関する刑事事件の量刑傾向や裁判例などを紹介します。

 なお,交通事故で被害者が死亡した場合,危険運転致死傷罪で処罰されるケースもあります。その場合,法定刑が重く,量刑傾向も異なるため,今回は,危険運転致死傷罪ではなく,過失運転致死傷罪で処罰されたケースを検討しています。

2 自動車事故の刑罰については,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(平成25年法律第86号)に定められています。
 この法律の第5条に「過失運転致死傷」の罪が定められています。
 具体的には,以下のとおりです。刑には,「百万円以下の罰金」もありますが,死亡事故の場合,起訴され,禁固刑が選択されるケースが多いです(ただし,「その2」で紹介するとおり,起訴された上で罰金刑が選択された裁判例もあります。罰金刑が選択されるのは,主に自動車事故で怪我をさせてしまった場合であり,そのようなケースでは,公判請求されずに,略式裁判で罰金を納付して刑事手続きが終わることも多いです。)。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
第5条
「自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし,その傷害が軽いときは,情状により,その刑を免除することができる。」

3 自動車の運転上必要な注意を怠ったことを認めるケースでは,量刑が問題となり,執行猶予付判決が得られるかどうかが問題となります。

 私が過去に担当した事件では,死亡事故で,実刑判決となった事件もあれば,執行猶予付判決となった場合もありますが,以下のようなポイントが裁判では重視されています。

【実刑判決になりやすい要素】
 ・過失(運転に関する不注意)が重大,悪質である場合
 ・被害者の数が1人ではない場合
 ・飲酒していたり,救護義務を果たさないなど道路交通法違反がある場合
 ・無保険で被害者へ損害賠償ができない場合
 ・前科前歴等がある場合

【執行猶予になりやすい要素】
 ・実刑判決になりやすい要素がない場合
 ・示談が成立していること

(その2に続く)

以上

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★