殺人事件の裁判員裁判で,「幇助犯」の主張が認められた事例
2021年4月
弁護士 菅 野 亮
当職と虫本良和弁護士が担当した殺人事件について,千葉地方裁判所は,弁護人の「幇助犯」であるとの主張を認めた上で,懲役10年の判決を言い渡しました。
なお,この判決は,検察官及び弁護人双方が控訴せずに確定しています。
検察官は,被告人をはじめ3名が共謀して殺人事件を行ったと主張しました。
弁護人は,被告人が実際に果たした役割や報酬合意がないこと等の事情から,本件では,共同正犯ではなく,「幇助犯」が成立するに過ぎないと主張をしました。
「幇助」については,刑法62条で「正犯を幇助した者は,従犯とする」と定められており,刑法63条で「従犯の刑は,正犯の刑を減軽する」と定められています。
つまり,ある人の犯罪を手伝った場合でも,「共同正犯」ではなく,「幇助犯」だとされた場合,「刑を減軽」することになり,量刑判断において有利になります。
もっとも,犯行の一部を手伝った場合でも,共同正犯が成立することが多く,この10年間で,殺人事件で「幇助犯」として処罰された事件は,15件ほどしかありません(もともと「幇助犯」として起訴された事件を含みます。)。
本件では,弁護人は,被告人が犯行現場にいたものの,実行行為をしていないことや,報酬の約束等もなかったこと等,被告人が消極的な役割しか果たしていないことを丁寧に立証しました。
その結果,判決で,「幇助犯」と認定されました。
懲役10年という刑は,決して軽い刑ではありませんが,首謀者とされた被告人は,第1審では,無期懲役の判決を受けていますので,その差が大きいことは間違いありません。
共同正犯として起訴された事件においても,被告人の加担の度合い等によっては,「幇助犯」といえる場合があるという視点を忘れずに今後とも事件に向き合いたいと考えています。
以上
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★