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精神疾患がある被告人の裁判では,「心神喪失」とか「心神耗弱」という言葉を聞きますが,どういう意味なんでしょうか。また,精神疾患を有する被告人の事件で,精神鑑定が必要なのはどうしてですか。

よくあるご質問刑事事件

刑法39条は,「心神喪失者の行為は,罰しない。心神耗弱者の行為は,その刑を減軽する。」と定めています。しかし,刑法に,「心神喪失」及び「心神耗弱」の意味を定義する規定はありません。過去の裁判例では,「心神喪失」等について,以下のように判断されています。

「心神喪失ト心神耗弱トハ孰レモ精神障碍ノ態様ニ属スルモノナリト雖其ノ程度ヲ異ニスルモノニシテ即チ前者ハ精神ノ障碍ニ因リ事物ノ理非善悪ヲ弁識スルノ能力ナク又ハ此ノ弁識ニ従テ行動スル能力ナキ状態ヲ指称シ後者ハ精神ノ障害未ダ上叙ノ能力ヲ欠如スル程度ニ達セザルモ其ノ程度著シク減退セル状態ヲ指称スルモノナリトス」(大判昭6年12月3日)

分かりやすくいえば,心神喪失とは,①精神の障害により,②弁識能力がない(違法性が認識できない),あるいは,③行動制御能力がない(違法性が意識できるとしてもその行為をやめることができない)状態です。この判例の定義によれば,心神喪失ないし心神耗弱を判断するためには,精神障害の有無や精神障害(ないしその症状)がどのように事件に影響したのか,検討する必要があります。
裁判官には,必ずしも精神医学の専門知識があるわけではありませんから,精神医学の専門家である精神科医に精神鑑定を依頼する必要がでてきます。

2021年1月29日

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★