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検察こぼれ話② ~決裁~

2020.12.11ブログ

2020年12月11日   
弁護士 金 子 達 也   

 

1 検察庁には「決裁」という制度があります。
  検察官は,身柄事件として送致されてきた被疑者を勾留請求するか釈放するか,捜査した事件を起訴するか不起訴にするかなどの,様々な決断をする場合に,自分の方針を上司である決裁官に伝えて,その了解を取り,決裁印を押してもらう必要があるのです。
  これが「決裁」です。
  この「決裁」が良い方向に機能すれば,経験ある上司の助言を得ることで,検察官の独断専行を許さず,適切・的確な検察権が行使されることになります。
  「決裁」という制度は,本来は,そのような目的で行われているものでした。

2 しかし,筆者の若い頃には,様々な個性のある決裁官がいて,決裁官が仕事の邪魔になることも多々ありました。
  そのため,若手検察官は,決裁官対策に頭を悩ませていました。
  筆者が実際に接した決裁官の中にも,機嫌が悪くて怒ってばかりの決裁官とか,どんなに忙しくても3時のお茶の時間は欠かさない(その間は「決裁」を受け付けてくれない)マイペースすぎる決裁官とか,自慢話ばかりして報告をちっとも聞いてくれない決裁官など,難儀する決裁官がたくさんいました。
  そのため,若手検察官は,お互い,「次席検事は,今,機嫌悪そう・・・」などと,決裁官に関する情報を共有しつつ,「決裁」を受けるタイミングをはかったりしていたものでした。

3 その後,働き方改革が検察庁にも浸透していく中で,部下が決裁官を評価する制度なども一部取り入れられたことから,最近では,このような個性のありすぎる決裁官は淘汰され,姿を消してきた印象があります。
  筆者自身も,決裁官としての仕事をさせていただいたこともありますが,そのころには,新任決裁官研修なるものを受講させられ,諸先輩方から「あるべき決裁官の姿」を教わり現場に赴いたりもしていました。
  また,最近の「はんこ」廃止の流れに乗って,この「決裁」制度自体がオンラインになるなど,更にカタチを変えて行くのかも知れません。

 

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★