物損事故を起こしましたが,刑事裁判になるのでしょうか?
1 物損事故を起こした原因が,罰則のある他の交通違反であった場合には,当該交通違反で処罰される危険があります。
例えば,物損事故を起こした原因がスピード違反(道路交通法22条の最高速度超過違反)であった場合には,道路交通法118条1項1号により6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられるおそれがあり,仮に検察官が犯情悪質として懲役刑を求刑したいと考えた場合には,起訴(公判請求)されて公開の法廷で刑事裁判を受けなければならない危険は(抽象的には)あります。
とはいえ,日常的に多発する交通違反に対しては,交通反則通告制度が適用されるのが通常ですので,よほど悪質なスピード違反(一般道路では時速30キロ以上,高速道路上では40キロ以上の速度超過)でなければ,反則金を支払って手続は終わりになります。また,仮に刑事処分が必要と判断されたとしても,略式手続(公開の法廷に出頭する必要はない書面審査)により罰金を納めれば済みます。
そういった意味で,物損事故を起こしたからといって,刑事裁判を受けなければならない危険はさほど大きくありません。
2 もっとも,お酒を飲んで自動車を運転して物損事故を起こした場合だけは,別格です。
各地の実情に応じた基準の違いはあるものの(例えば飲酒運転が多発する土地柄では厳しく対処される傾向があります。),飲酒運転で物損事故を起こした場合,それだけで,道路交通法65条1項(酒気帯び運転の禁止規定)及び同法117条の2の2第3号(同違反に対する罰則規定)により起訴(公判請求)し,懲役刑を求刑するという取り扱いをしている地域が多いと聞いています。
これは,これまで飲酒運転による悲惨な交通事故が多発して社会問題となっているのに一向に飲酒運転がなくならない現状を憂慮し,飲酒運転の危険性を現実化させるような物損事故を起こした場合にも厳しく対処しなければならないという価値観が反映しているものと思われます。
そして,仮に起訴された場合には,その法定刑は「3年以下の懲役」ですから,決して軽くはないことがわかるはずです。
もちろん飲酒運転はあってはならないことですが,仮に飲酒運転で物損事故を起こしてしまった場合には,遠慮なくご相談ください。事案を見極めた上,最も有効と思われる弁護活動を提供することが可能です。
2020年11月9日
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★