2年前に観光で来日し,そのままオーバーステイになってしまいました。いずれは警察や入管の摘発を受けて逮捕されるのではないかと不安です。母国の家族にも会いたいので,できるだけ穏便な方法で母国に帰りたいのですが,どうしたらいいでしょうか?
日本の在留資格がない外国人に対しては,出入国管理及び難民認定法(以下,「入管法」といいます。)24条による退去強制手続が執られますが,その手続の間,出入国在留管理庁(入管)の施設に収容されてしまう危険が伴います。
これに対し,出国命令というのは,①速やかに日本から出国する意思をもって自ら入国管理官署に出頭したこと,②不法残留(オーバーステイ)以外の退去強制事由に該当しないこと,③入国後に窃盗罪等の所定の罪により懲役又は禁錮に処せられていないこと,④過去に強制退去され又は出国命令を受けて出国したことがないこと,⑤速やかに日本から出国することが確実と見込まれることの5つの条件が整っていれば,身柄を拘束しないまま簡易な手続により出国させる制度です(入管法24条の3)。
つまり,あなたが,日本で犯罪等を犯すことなく生活しており,問題なのはオーバーステイになってしまったことだけであれば,この出国命令制度を使って身柄を拘束されずに母国に帰国できる可能性があるわけです。
また,仮に強制退去とされてしまった場合には,帰国後5年又は10年間,日本への上陸を拒否されてしまうのですが,出国命令により出国した場合であれば,上陸拒否期間は出国した日から1年とされているので,この点においても,出国命令により帰国するメリットはあります。
出国命令により帰国するためには,パスポートを持って,全国12カ所(札幌,仙台,東京,横浜,名古屋,大阪,神戸,広島,高松,福岡,鹿児島,那覇)にある地方出入国在留管理局,その支局又は出張所に,自ら出頭する必要があります。
その際には,帰国する航空券を買うためのお金もあることを証明できるもの(例えば預金通帳)なども持って行くと,手続がスムーズに進むと思われます。
一方,この手続には概ね2週間程度の日数を要するので,航空券の予約は入管の職員と相談しながら進めた方が良いと思われます。
出国命令の内容は,入管のホームページでも詳しく説明されています。また,弁護士に相談いただければ,手続の見通しや詳しい説明,更には代理人として入管の職員とのやりとりをお手伝いすることもできますので,ぜひ,ご相談ください。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★