イギリス便り⑩~Criminal Law(刑法)~
2020.09.30ブログ
イギリス刑法の特徴の1つは、体系化された1つの成文法が存在しないことです。イギリスの刑事実体法は、判例法と多数の個別立法により構成されており、日本法における「刑法」に相当するような包括的な立法が存在しません。特に、共犯や未遂犯などの重要な概念は判例法により発展してきたため、イギリス刑法を理解するためには判例法の学習が不可欠です。
また、日本法との比較という観点から考えると、イギリス刑法は、体系的な一貫性よりも結論の妥当性が重視されているように感じられます。この点も、いわゆるコモンローの伝統が影響しているといえそうです。
加えて、イギリスの刑事第一審では、陪審員による事実認定が行われるため、殺意や正当防衛といった概念の法律解釈は、陪審への説示という形で示されます。そのため、複雑な説明方法が採用されることはなく、過去の判例等を踏まえつつも陪審員が事実への当てはめをできる程度にシンプルな法律解釈が採られています。
弁護士 中井淳一