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イギリス便り⑦~Land law(不動産法)~

2020.05.21ブログ

不動産法は、占有、担保、賃貸借など、不動産の利用や取引に関する法律分野です。日本法では、民法の一部として取り扱われるのが一般ですが、イギリス法では独立した法分野となっています。

 イギリス不動産法の特徴の一つは、不動産の登録(registration)が、対立する権利の優劣関係が問題になる状況で重要な意味を持つことです。単純な例としては、不動産の二重売買のような場合には、原則として登録された不動産の権利者が優先されることになります。判例等による種々の例外はありますが、基本的な考え方は、日本法における不動産登記による物権変動と共通しているといえます。

 もう1つの大きな特徴は、不動産に関する権利が、「legal estates」と「equitable interests」に分けられることです。「legal estates」については、基本的には登録された法的権利を意味するので、理解に困る点は少ないです。一方で、「equitable interests」については、不動産に関する実質的利益を示す概念なのですが、日本法には対応する法的概念がなく、なかなか説明が難しい法律用語です。例えば、不動産の購入に一定の支出をした人は、権利の登録をしていなくても、「equitable interests」に基づいて第三者に対抗し得る場合があります。

 不動産法は、その他にもイギリス法特有の概念が多く、留学生の学習者にはなかなか学習のハードルが高い分野といえそうです。

 

弁護士 中井淳一