菅野亮弁護士が研修(「控訴審の傾向と破棄事例2件の報告」)の講師をしました
菅野亮弁護士が,東京三弁護士会主催の研修の講師を担当しました。内容は,「控訴審の傾向と破棄事例2件の報告」です。司法統計等から読み取れる控訴審の破棄率等の推移,近時の傾向及び菅野亮弁護士が実際に担当した控訴審での破棄事件(1件は,原審が有罪で控訴審で無罪,1件は原審が無罪で,控訴審で差戻)の報告でした。
刑事裁判の控訴審の在り方は,裁判員制度が施行される以前から議論のあるところです。控訴審は事後審であり,直接主義・口頭主義が徹底される第1審の判断が基本的には尊重されるとの考え方があります。しかし,実際の破棄率は,部(裁判官)によってもかなり異なるのが実情です。
破棄率をみても,平成18年から平成20年の裁判官裁判時代は,17.6%でしたが,裁判員制度が施行されてから平成24年3月までの破棄率は6.7%となっており,破棄率はかなり下がっています(しかも多くは,量刑不当の2項破棄事案でした。)。これは,第1審を尊重しようという意識の強さの表れかもしれません。
平成25年から平成27年までは,概ね9%と裁判員裁判施行当初よりは破棄率が上昇しており,最近は,より積極的に高裁が第1審を破棄している実感もあります。
破棄事由ですが,平成27年以降の破棄判決で,判例秘書に掲載された事例は,次のとおりでした。
① 不法に公訴を受理(378条2項) 2件
② 理由不備(378条4号) 4件
③ 訴訟手続の法令違反(379条) 12件
④ 法令適用の誤り(380条) 2件
⑤ 事実誤認(382条) 55件
⑥ 量刑不当(381条,397条2項)14件(2項破棄8件)
量刑不当による破棄判決は,判例秘書に掲載される件数が少なく,その比率等は,参考になりませんが,事実誤認により破棄されるケースがかなり多い印象があります。
事実誤認を理由に破棄された事案のうち,無罪方向での破棄が34件,有罪方向での破棄は21件(うち差戻は8件)となっており,検察官が控訴する事件は数としては少ない現状を踏まえると,検察官控訴事件の破棄率はかなり高い印象です。
今後も,破棄事件の研究を続け,弁護活動に活かしたいと考えています。
以上