『裁判員裁判の量刑』が出版されました。
当事務所の弁護士である菅野亮,中井淳一が執筆者の一員となっている『裁判員裁判の量刑』が現代人文社から出版されました。
本書では,まず,裁判員裁判における量刑判断検討の意義と,量刑に関する審理・手続の変化について論じられています。
続いて,犯罪類型ごとに,①量刑事情についての事実認定,②量刑の基準,③量刑事情の範囲,④量刑事情の位置づけ・重み,⑤量刑の変化という視点から,各裁判例の分析を行っています。各犯罪類型ごとに,量刑分布表や,裁判例の分析結果を集約した一覧表も掲載されており,大変充実した内容となっています。
本書の最終章では,「裁判員裁判における量刑判断の特徴と情状弁護」というテーマで行われた座談会を収録した特集が組まれています。この座談会では,原田國男元判事を交え,各犯罪類型ごとに量刑事情の位置づけや具体的な量刑の変化等について検討がなされています。
本書を読んで,裁判員裁判になって犯罪類型ごとに量刑事情の位置づけや重さが変化してきており,それに対応して弁護活動をする必要があると深く感じました。
性犯罪事案については,被害者が受けた精神的打撃を重視し,姦淫行為が未遂であっても,行為態様の悪質さから「既遂に匹敵」すると評価される事例が出ていること。社会内での更生が可能であると判断されれば,裁判官裁判時代には実刑とされていたものでも執行猶予判決となるものが存在していること。被告人が「若年」であるという事実だけを伝えても裁判員には共感を得られないので,弁護人がこれをいかなる位置づけで主張し,裁判員を説得するかが重要であること。
これらはほんの一例ですが,裁判員裁判における弁護活動として何をしなければならないか,そのヒントが本書には多く散りばめられています。
私のような経験の浅い弁護士にも,多くの裁判員事件を既に担当されている弁護士の方にも,学ぶことの多い本だと思います。ぜひご一読下さい。
報告者 塩野