労働審判とはどのような手続でしょうか?
当社に、先日、裁判所から、労働審判手続申立書が送られてきました。
申立をしたのは、当社の元従業員です。当社の認識では、合意退職により雇用関係を終了させたはずですが、その従業員は合意退職ではなく解雇であり、解雇が無効であると主張しています。
労働審判手続は、どのように進んでいくのでしょうか?
当社としてはどのような対応が必要でしょうか?
労働審判とは、労働関係に関する個々の紛争を解決するために裁判所で開かれる手続です。
民事訴訟と同様、一方当事者(多くは労働者)からの申立により、相手方(多くは会社側)に対する請求が行われます。民事訴訟の場合には、和解を勧めたり、判断を行ったりするのは裁判官ですが、労働審判の場合には、労働審判委員会(裁判官1名、使用者代表1名、労働者代表1名)が調停による話し合いを試みたり、法律的な判断を示すなどします。
労働審判の特徴
- 専門性
労働審判委員会に、使用者代表及び労働者代表として、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者が労働審判員として任命されます。そして、労働審判手続の中でその知識経験が生かされることになります。 - 迅速性
労働審判手続は、原則として3回以内の期日で審理を終結させなければならないこととされています(労働審判法15条2項)。そのため、現実には、申立から3~4ヶ月程度で審理が終結するケースが多くなります。通常の民事訴訟の場合には、1年以上の期間がかかることも希ではありません。そのため、労働審判は、民事訴訟と比較して、かなり短い期間で手続が終結することになります。 - 柔軟性
労働審判手続の課程で、調停の成立による解決の見込みがある場合には話し合いを試みることとされています。さらに、話し合いで解決がつかない場合には、労働審判委員会が審判を下すことになりますが、その場合にも、適正かつ実効的な解決を図るため、柔軟な労働審判をすることが求められるとされています。
会社にとっての労働審判手続は、労働者が申し立てた労働審判の書類が裁判所から送られてくるところから始まることがほとんどのはずです。
裁判所からの書類には、労働者側が作成した申立書の他、労働審判期日の呼出状が入っています。これに対して何の連絡もせずに欠席をすると、労働者側の言い分どおりの審判が出されてしまったり、不出頭に対する過料という制裁を受けることがあり得ます。
呼出の書類が届いた場合には、可能な限りその呼出に応じ、難しい場合には日程調整の連絡を裁判所に入れた方がよいでしょう。
労働審判期日に出席するに当たっては、前もって会社側の言い分をまとめた「答弁書」という書類を提出しておく必要があります。
労働審判手続では、第1回期日で両当事者の言い分が基本的には尽くされ、労働審判委員会がある程度の心証を形成することが多いです。そのため、第1回期日までに、しっかりとした主張とそれを裏付ける証拠を提出することが、非常に重要になります。
労働審判の申立から第1回期日までは、法律上原則として40日以内にすることとされています。そのため、申立をされた会社側にとって、第1回期日までの日程は非常にタイトです。労働者側の主張に対して争っていくのであれば、早めに弁護士等の専門家へ相談することをお勧めします。