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犯罪による財産的被害等を回復するための方法

よくあるご質問被害者参加制度等

次のような方法が考えられます。

  • 任意の交渉(示談
  • 刑事和解
  • 損害賠償命令制度
  • 通常訴訟
  • 犯罪被害者等給付金の請求

 

任意の交渉(示談)

犯罪被害の回復について、もっとも基本的な方法は加害者と直接交渉して、賠償金を支払うという約束をさせ、それを履行させるという方法です。

具体的には、犯罪被害の賠償に関する和解契約を締結し契約を約束通り守らせ、賠償金を支払わせることとなります。

この方法がとられる場合として、一般には加害者の代理人弁護士等から示談の提案を受けて、これに応じる場合が多いでしょう。
メリットは、費用がかからないか比較的少額で済むことや、時間的心理的負担が比較的少ないという点が挙げられます。
デメリットとしては、加害者が和解しない(賠償を約束しない)と成立しないことや、約束をしても実際に支払わない場合に強制的に支払わせることができない(支払わせるためには別途裁判等が必要になる)ことです。

 

刑事和解

刑事和解とは、被告人と被害者等が共同してその合意の内容を刑事裁判の公判調書に記載することを求め、それが記載されたときには、その記載に基づいて強制執行をすることができるという制度です。

任意の交渉」のデメリットの一部を解消するために有意義な制度です。
加害者が和解に応じない場合には利用できませんが、応じる場合、後日加害者が和解の内容に従った損害賠償金を支払わない場合に、加害者の財産に強制執行をすることが可能となります。

具体的な方法は、加害者の刑事裁判が行われている間に、加害者との間で損害賠償に関する合意がある場合に、その合意の内容を刑事裁判の公判調書(裁判期日で行われた手続き等を記載する書面)に記載するよう書面で申し立てます。
そして、その合意が公判調書に記載されると、その公判調書の記載は「裁判上の和解と同一の効力を有する」とされています(「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(通称:犯罪被害者等保護法)」13条4項)。
これにより、加害者がその合意内容に従った損害賠償金を支払わない場合、加害者の財産に強制執行をすることが可能となります。

 

損害賠償命令制度

加害者本人が損害賠償に関する和解に応じない場合等、「任意の交渉」「刑事和解」では被害の回復を図れない場合に、裁判手続により損害を立証して判決を受け、これに基づいて加害者の財産に強制執行をすることが考えられます。

もっとも、通常の裁判手続は、訴状を作成したり、犯罪行為の内容や損害の内容・額等を自ら立証しなければならず、ただでさえ犯罪被害により多大な身体的・精神的苦痛を被った被害者の方やご遺族の方には大きな負担となっていました。
他方、刑事裁判においては、加害者による犯罪行為のあったことの立証に検察官が成功した場合、その立証を利用して損害賠償を請求することができれば被害者の方の負担は大幅に軽減されます。
そこで、犯罪被害者等保護法では、損害賠償命令制度を設けており、この制度により通常の裁判手続と同じ効果を受けられる場合があります。

損害賠償命令制度について

損害賠償命令制度を利用するためには、故意の犯罪行為により人を死傷させた事件等一定の事件により被害を受けた場合であることが必要です。
そして、その事件についての刑事裁判が終結する前に損害賠償命令の申立をする必要があります。

損害賠償命令制度の手続と効果

損害賠償命令の申立をすると、刑事裁判終了後に損害賠償について審理する期日を別に設けます。
期日は4回以内(初回の期日は、刑事裁判の判決の日に行われる)とされています。
この審理により、裁判所は加害者に対して適正と考える損害賠償金の支払いを命ずることができます。加害者に対してこの命令が告知された日から2週間が経過して命令が確定すると、この命令により加害者の財産に強制執行することが可能となります。
もっとも、加害者が命令の告知を受けた後、異議の申立をすると、命令は確定せず、通常の裁判手続に移行することとなります。

 

通常訴訟

任意の交渉」「刑事和解」「損害賠償命令制度」で被害の回復を受けられない場合には、通常の裁判手続を利用して、加害者に対する損害賠償請求を行うこともできます。

損害賠償請求に当たっては犯罪行為や損害額等を被害者の側で立証しなければならない点で負担は大きくなります。
もっとも、加害者に対して損害賠償責任(民事責任)をしっかりと追及し、責任を負わせることは大切なことです。被害者の方が犯罪被害から財産的・精神的に回復するためにはこの点の責任追及を果たすことが必要な場合もあるでしょう。
自ら裁判を行うことは負担も大きいため、弁護士等に相談して依頼することが多くの場合必要となると思われます。

 

犯罪被害者等給付金の請求

任意の交渉」「刑事和解」「損害賠償命令制度」「通常訴訟」は、いずれも加害者本人に対して損害賠償を請求して、支払いを受ける方法です。

もっとも、加害者本人に損害を賠償する財産がない場合には、賠償金を支払わせることができないこともあります。
そのような場合に、犯罪被害者等を保護するために、「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(通称:犯給法)」という法律があり、この法律に基づいて一定の被害回復を受けうる場合があります。