加害者からの賠償が遅れている場合に,早期に支払を得る方法はありますか?
交通事故にあった被害者は,通常であれば,加害者が加入している任意保険会社から賠償金の支払を受けることになります。ただし,加害者が,事故の状況から自分に責任がないなどの主張をしている場合等には,裁判等が行われるまで,加害者の加入している任意保険会社からの支払を得られない場合があります。
そのような場合に,早期に支払を受けるための方法は,3つ考えられます。
被害者が加入している任意保険に付加されている人身傷害保険
被害者が加入している任意保険に付加されている人身傷害保険(注:加入している保険会社により,名称は若干異なります。)を利用する方法です。人身傷害保険というのは,自動車の運行に起因する事故等により被保険者が死傷することを要件として,定められた保険金が保険会社から支払われる内容の保険です。ポイントは,事故が発生して怪我等をした場合には,常に保険金が支払われるという点で,被害者と加害者の間の過失割合が問題になりません。
支払われる保険金の額は,被害者の負傷の程度等によって異なりますが,ご相談のように重度の後遺障害が残るような場合には,数千万円単位の保険金が支払われることになるものと思われます。
注意しなければならないのは,人身傷害保険は,通常の任意保険の特約となっており,人身傷害保険に加入していない場合もあるということです。設問のような場合には,まず,被害者自身が加入している任意保険会社に相談して,人身傷害保険を利用できるかを確認することが重要と思われます。
被害者が加入している任意保険に付加されている無保険者傷害担保特約
被害者が加入している任意保険に付加されている無保険者傷害担保特約(注:加入している保険会社により,名称は若干異なります。)を利用する方法です。無保険者傷害担保特約というのは,交通事故の加害者が任意保険に加入していなかった場合に,被害者の保険により損害の填補を行うという保険です。
ただし,被害者に後遺障害が発生した場合にだけ適用されるという点に,注意が必要です。また,任意保険の特約であり,付加されていない場合があるという点は,人身傷害保険と同様です。
無保険者傷害担保特約により支払われる保険金の額は,被害者に発生した損害の額であり,過失相殺も行われます。この点が,上記の人身傷害保険とは異なる点です。
加害者が加入している自賠責保険から仮渡金
加害者が加入している自賠責保険から仮渡金の支払いを受けることです。
仮渡金とは,加害者側の責任の有無や賠償額にかかわらず,被害者が一定額の支払を早期に受けられるという制度です。加害者が責任がないと主張しているような場合でも,支払を受けられることになります。
ただし,仮渡金の額はそれ程高額ではありません。ご相談のような大きな怪我をした場合でも,支払を受けられる金額は40万円となります(金額は,政令で定められています)。
大幅な過失相殺がされるような事案では,人身傷害保険を利用した方が支払額の面で有利になることが考えられます。逆に,被害者にまったく過失がないような場合には,無保険者傷害担保特約を利用した方が支払額が増える可能性があります。
特に大きな怪我をした事故などの場合には,どちらの方法を利用するか,慎重に検討した方がよいでしょう。