「境界に関する民事紛争とその解決手段」
6月12日(土),千葉県土地家屋調査士会で,「境界に関する民事紛争とその解決手段」と題する研修を行いました。
「境界」は,多義的な言葉です。
「境界」が示す代表的なものは所有権の範囲の限界線(所有権界)と不動産登記法上登記された土地の境として存在する筆界(ひっかい,不動産登記法123条①)です。
通常は,所有権界と筆界とは一致するはずですが,所有権界は,合意や時効取得によって移動することもあり,時には,所有権界と筆界が異なることもあります。
そこが紛争をわかりにくくしている要素でもあります。
境界に関する紛争を解決する手続も多数あります。
所有権界の問題については,①当事者間の合意,②民事調停,③調査士会のADR,④所有権確認訴訟等の民事訴訟により解決されます。
他方,筆界の問題については,①法務局の筆界特定制度か,②筆界確定訴訟を利用して解決することになります。
紛争の実体としては,筆界や所有権界どちらの問題も混在する場合が多いのですが,紛争解決手続が全く異なるものであるために,利用者からみると使い勝手の悪い状況となっています。
個人的には,筆界については,簡易・迅速な手続きである筆界特定制度を利用し,所有権界については調査士会のADRが利用されることが望ましいと思います。
いずれの手続きにおいても境界に関する専門家が必ず関与するからです。
しかし,昨年,千葉地方法務局で筆界特定を申請したところ,結論がでるまでに1年もかかり,また事件によっては,2年近いかかる事件もあると聞きました(ちなみに,千葉地方法務局の標準的スケジュールは,6ヶ月です。)。また,申請時も法律上必要とされておらず,また解決に意味のあるとは思えない細かい事実を聞かれるなど,利用者に負担感のある手続きとなっている実情があります。
それでは筆界確定訴訟よりも簡易で迅速だという筆界特定制度のメリットが薄れてしまうので,是非,法務局及び筆界特定制度に関与する専門家には,筆界特定制度を本当に簡易・迅速で利用しやすい制度にしていって欲しいと思います。
担当 菅 野