「法廷弁護技術」研修④ 主尋問とその講評2
報告者 菅 野
さて,いよいよ,NITAで教える指導法の理論と実践です。
NITAでは,法廷弁護教育は,「実演することにより学ぶ」(Learning by Doing)方法が最良であると考えられています。
さらに,NITAの指導法は,生徒が実演する際に,以下の4つのステップを必ずふみ,適切な「講評」(critique)を行います。今回,私が受講したのも「Adovocacy Teacher Training Program」(法廷弁護指導者養成講座)で,この適切な「講評」を実演し,NITAの講師から「講評」の「講評」を受けるのです。
【NITA講評の4つのステップ】
①適切な見出しをつける(Headline)
②生徒の実演で問題のある箇所3箇所を正確に再現する(Playback)
③問題点に処方箋を与える(Prescription)
④理由を説明する(Rationale)
これは,実に練られ,かつ極めて実践的な指導法だと思います。
例えば,生徒は,正確に自分の実演を再現,引用されて初めて,その講評を受け容れる前提ができますし,問題点がより明確になります。
また,見出しをつけることで明確なテーマも設定できますし,その上で,具体的な解決策(よりよい尋問の案)を講師自らが示し,その説明を与えるということで,生徒は,理論的な学習だけでなく,次の法廷で実践できるヒントを掴めるのです。
もっともこのような講評は,本当に,「言うは易く行うは難し」です。
この4ステップを実行化するために,極めて重要な諸原則もあり,「直せるものだけ直すようにせよ」とか「一つの講評は,一つのポイントに絞る」などというのは極めて重要な点です。
講師をしていると,ついつい何点も指摘したくなりますし,相手のレベルを考えずに指導しがちです。
しかし,生徒が飲み込めなければ,指導自体,単なる自己満足に過ぎません。
う~ん。
こういった指導ができれば明日からでも生徒は,自分のプラクティスにプラスアルファを見つけることができると思います。
さすがに,米国においては,ロースクール等でも極めて実践的な勉強がなされているだけあって(ちなみに,今回の研修において私達が講評する生徒さんは皆ロースクールの生徒さんでした。),法廷弁護技術の指導法も机の上ではなく,実践的です。
では,いよいよ,批評の中身を見てみましょう。