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一部執行猶予制度がはじまりました

2016.06.09ブログ

6月1日から一部執行猶予制度が施行されました。これは実刑判決の一部について執行を猶予し,残りの期間を社会の中で生活することによって更生と再犯防止を図る制度です。たとえば,「懲役3年うち1年につき執行猶予3年」という判決の場合,2年間刑務所に行った後,残り1年については社会の中で生活し,3年間犯罪を犯さなければ刑務所に戻らなくて良いということになります。この3年間の執行猶予期間中,保護観察がつけられることもあります。性犯罪,暴力,飲酒運転などについては保護観察所が専門プログラムを導入していることが多く,これを受けることもできます。薬物使用者の場合は必ず保護観察の対象となり,治療改善のための専門プログラムを受けるなどして再犯防止に努めなければなりません。
以前は刑の全部にしか執行猶予をつけられませんでした。執行猶予をつけることができない場合は,刑期全部刑務所で服役する実刑判決しかなかったのです。刑満了前に社会復帰できる仮釈放という制度はありましたが,運用は不透明でいつ社会に復帰できるかは不安定でした。一部執行猶予制度ができることにより,実刑判決やむなしの事案であっても,早期に社会復帰して更生を図ることができる道筋が増えたと評価できます。
新制度であるだけにどのような運用がされるか不透明なところもあります。特に,本制度は今までより早期に社会内で更生を図ることができるという点で再犯防止に意味がある反面,トータルな刑期が不当に長くなる可能性があります。さらに,あるいはこれまで全部執行猶予が宣告されたはずの事件が,一部執行猶予になって被告人が一定期間刑務所で服役しなければならないことになってしまう可能性もあります。このようなことがないように我々刑事事件に携わる弁護士としては本制度の運用を注視し,依頼者の方により良い結論が出るように努力する所存です。

弁護士 佐藤隆太