当事務所弁護士による新人事務研修を受けました ~債権回収編~
2025年2月
事務局A
様々な法律分野での相談依頼がありますが、今回はその中でも金銭貸借の債権者側からの相談依頼に対する弁護活動と、その業務を行う中での事務員としての注意点について、当事務所弁護士による研修を受けました。
債務者が契約に基づき借入金の返済をきちんと行っていれば、法律事務所への相談もありませんが、債務者の返済がなされない場合の、債権者からの相談は少なくありません。
相談者である債権者が望むゴールは貸金を回収することです。
お金を借りてその返済をしない人というのは、お金を持っているのに返さないというより、返すお金がなくて返せない、という人が多いのが実情です。ただ、債権者へ返済するお金はなくても不動産を持っていたり、勤め人であれば会社からの毎月の給与があるので、それを差し押さえるという強制執行により債権回収をするという手段があります。
強制執行をするには債務名義というものが必要です。債務名義とは、確かに債務者に対して有する債権があるということを証する書面のことです。契約書を交わしているから、それを債務名義に、とはなりません。裁判所や公証役場の公的機関が作成した公的文書が債務名義となります。
公証役場での公正証書は、執行認諾文言付き公正証書というものが債務名義となりますが、これは、債務者が強制執行に服する旨の陳述が記載されていることで、裁判手続きをせずに強制執行できる、というものです。債権者が債務者と金銭の貸借契約の際、そこまでしていればいいのですが、なかなかそこまでしていることはないと思うので、しかも返済が滞っている債務者だと連絡も取れないなど当たり前にあり、そうなると一般的には裁判所が作成した文書を債務名義として強制執行する、ということになります。
裁判所が作成した債務名義となる文書とは、執行文付き判決正本、仮執行宣言付支払督促正本などがあり、これらを取得するためには訴訟を提起することが必要になります。そこで、弁護士の出番となります。
まずは債務者を被告とした訴訟を提起し、勝訴判決を得て確定させることがスタートです。この訴状作成時に、事務局は弁護士が作成した訴状内容のチェック、証拠作成等をしていくのですが、その際のチェックポイントや注意点について今回の研修で学びました。また、お金を貸したまま、債務者が返済せず、債権者も催告しないと権利を行使できる時から5年で時効が完成し、時効援用によって回収不可能となってしまうため、そもそも時効になっていないかを確認することも大事です。時効を阻止するために確定判決を取得します。判決を取得後の時効は10年です。
また、勝訴判決を取得するまでには時間を要し、不動産を所有している債務者であれば、強制執行を逃れるために債務名義が作成される前に、所有の不動産を配偶者や親戚等に贈与する等して名義変更をする、ということも考えられるため、不動産の仮差押命令申立てを行うことや、その他の保全処分についても学びました。
金融機関の債権回収に伴う訴訟の際は、契約書から取引約定書、印鑑証明書や、交渉記録など様々な証拠書類があるため、事務員としてはまず第一に、絶対に紛失しないこと、他の事件の記録や書類と混じることのないように管理を徹底することが重要です。期限の利益喪失の記載がどの書面に記載されているのか、遅延損害金の計算なども大事なチェックポイントとなります。
最終目的は債権を回収することであるため、強制執行に必要な債務名義となる判決の主文に記載される数字、債務者の名前など間違いがないか確認することも重要です。一文字でも間違えがあると更正する必要があり、強制執行に至るまでに時間を要してしまうからです。
少しでも依頼者の利益につながるよう、法律事務所の事務局としてできることを、正確確実にしていきたいと思います。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★