「境界問題に関する和解条項作成上の留意点」
2月20日(日),土地家屋調査士会で,境界問題に関する和解条項作成上の留意点と題する研修を行いました。
訴訟や示談の場で和解条項を作ることが多いのですが,日常業務の中では,境界の問題に関する和解条項を作る機会はあまりありません。
研修を行うにあたり,和解条項に関する文献・裁判例などを調査しました。
中には,これでは「境界」と「筆界」とを混同しているのではないかと誤解を与えるような文例を載せている文献もありました。また,現在は精度の高い図面があるので特定性を欠くようなことはないと思いますが,かつての和解条項の中には特定性を欠き,無効とされたものもあります(最高裁昭和31年3月30日最高裁判所民事判例集10巻3号242頁)。こうした先人の失敗から学ぶことは多いものです。
筆界の合意は当事者間ではできないと何度も述べたので,研修の終わりに,法務局に,境界立会書を取得しているが,どのような意味があるのかという質問がありました。
土地家屋調査士の先生方の業務の中で,境界の立会・承認書の取得は日頃から行われていることと思います。しかし,このような立会のみで,境界は確定しませんし(それを一つの資料とすることはもちろんですが。),原則として所有権界に関する合意だと解釈されない場合も多いと思います。あくまで,「ここが境界だと思う」という当事者の認識の一致を述べたということにとどまるものだと思われます。
普段は意識しませんが,境界といっても様々な意味があるのだとあらためて感じます。
菅 野