イギリス刑事法紹介⑮~犯罪の成立要件~
イギリス法では、刑事裁判において犯罪の成立が認められるためには、”actus reus”(”guilty act”のラテン語訳)と“mens rea”(”guilty mind”のラテン語訳)の2つの要素が必要であるとされています。
actus reusは、犯罪の客観的要件を意味し、犯罪行為自体の他に、因果関係や結果発生等も含む概念です。各犯罪毎にactus reusの具体的内容は異なり、判例または成文法等で定められています。
mens reaは、犯罪の主観的要件を意味し、故意や過失といった日本法にもなじみがある概念の他、”recklessness”(無謀)という中間概念も存在します。recklessnessは、リスクが存在していることを認識しながら不合理にリスクを犯して行動に及んだ場合に成立します。mens reaとして、どのレベルが求められるかという点は、各犯罪類型毎に異なることになります。
そして、犯罪の成立のためには、これらのactus reusとmens reaが、同時に存在することが求められます。つまり、客観的に犯罪行為をしている際に、その主観的要件の充足も求められることになります。
なお、交通違反等の一部の軽微な犯罪については、“strict liability”という類型に含まれ、mens reaの充足は求められず、actus reusが認められれば、犯罪が成立することになります。
※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。
弁護士/英国弁護士 中井淳一
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★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★