ストーカー規制法はどのような法律なのか② ~規制の内容~
令和5年1月
弁護士 金 子 達 也
1 「つきまとい等」「位置情報無承諾取得等」に対する規制
ストーカー規制法は、何人も、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならないと定め(法3条)、違反した者に対し、次のような措置ができることを定めています。
⑴ 警告
警察本部長又は警察署長等は、警告を求める旨の申し出を受けた場合、つきまとい等の行為者に対し、更に反復してつきまとい等を行ってはならない旨を警告することができます(法4条1項)。
⑵ 禁止命令等
都道府県公安委員会は、つきまとい等の違反行為があった場合において、行為者が更に反復してつきまとい等を行うおそれがあると認めるときは、更に反復してつきまとい等をしてはならないことと、反復を防止するために必要な事項を命ずることができます(法5条)。
禁止命令等の効力は、命令等をした日から起算して1年とされていますが(法5条8項)、延長もできるとされています(法5条9項)。
⑶ 罰則
禁止命令等に違反し、更にストーカー行為を繰り返した者は2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(法19条)に、単純に禁止命令等に違反しただけの者は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(法20条)に、それぞれ処せられることがあります。
2 「ストーカー行為」に対する規制
⑴ 罰則
ストーカー行為を行った者(つまり、同一の者に対し、つきまとい等の行為を反復して行った者)は、前に禁止命令等を受けていなくても、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(法18条)に処せられることがあります。
ストーカー行為をした者が、既に禁止命令等を受けていた場合は、前記1、⑶と同様に、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(法19条)に処せられることがあります。
このように、ストーカー行為に当たる場合は、それだけで刑事処罰の対象になるのに対し、そこまで至っていない場合(つきまとい行為が「同一の者」に対し「反復」されたとまではいえない場合)には、まずは禁止命令等を発して様子をみて、命令違反があった場合に刑事処罰の対象にされるというのが、ストーカー規制法の建て付けになっています。
3 警察本部長又は警察署長等の援助
前記の警告、禁止命令等及び罰則は、相応の効果が期待できる反面、ストーカー行為を繰り返す人の中には、こういった措置が通用しない「病的」ともいえる執着者も、残念ながら散見されます。
そのため、ストーカー規制法では、被害者の自衛を助ける措置として、警察本部長又は警察署長等に対し、ストーカー行為等を受けている人から援助を受けたい旨の申し出があった場合には、関係行政機関等の公私の団体と緊密な連携を図るよう努めながら、自衛策の教示などの必要な援助を行うように務めなければならないという努力義務を定めています(法7条)。
これにより、警察では、ストーカー被害防止のための相談窓口をもうけて、さまざまな工夫を凝らした援助を行っているようです。
千葉県警察のパンフレットをみると、法に基づく具体的な「援助」策として、①自衛手段の教示、②被害防止交渉の連絡調整、③関係機関の教示、④交渉場所としての警察施設の利用、⑤防犯物品の教示又は貸出、⑥住所を知られないための措置などが紹介されています。
さらに、「その他の保護対策」として、①特定通報者登録制度の登録(登録した電話番号から110番通報した場合はストーカー被害者であることがわかり迅速な対応ができる制度)、②自宅からの一時避難、③自宅周辺のパトロール強化、④相手方家族等への監督依頼,⑤勤務先や通学先への協力要請などの対策が紹介されています。
実際にストーカー被害等にあった場合には、このような警察の援助や保護対策を利用して、更なる被害を未然に防いでいくことになります。
もっとも、一般の方に警察の敷居はやや高く、警察官に被害の実態を正確に伝えることが難しい場合もあります。
そのような場合には、弁護士が的確な助言や警察への同行(付添)を行うことも可能です。
次回はストーカー規制法の改正経緯について解説します。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★