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野生動物の捕獲等と鳥獣保護管理法について~ネズミを駆除したり、鳥の巣を撤去できるか~

2022.08.31ブログ

弁護士 菅 野  亮

1 鳥獣保護管理法による規制
 社会生活をしている中で、野生動物と接する機会があります。
 最近はあまりないと思いますが、かつては家にネズミがでたり、鳥の巣をつくられたりということもありました。
 家でネズミがでた場合に駆除したり、鳥の巣を撤去したりできるのでしょうか。

 この問題を規制しているのが、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(以下「鳥獣保護管理法」といいます。)です。

 鳥獣保護管理法8条は、原則として、「鳥獣及び鳥類の卵は、捕獲等又は採取等(採取又は損傷をいう。以下同じ。)をしてはならない。」と定めています。
 捕獲等とは、鳥獣を捕獲したり、殺傷したりする行為をいいます(同法83条には、未遂犯処罰規定もありますので、実際に捕獲等できない場合でも、捕獲行為に出た場合には処罰される可能性があります。)。
 捕獲等の対象は、鳥類及び鳥類の卵ですので、巣を壊すこと自体が鳥獣保護管理法において禁止されているものではありませんが、巣に鳥類の卵があった場合は、鳥類の卵を損傷したとして、同法8条に反する行為となります。

 「鳥獣」とは、「鳥類又は哺乳類に属する野生動物をいう」(鳥獣保護管理法2条)とされていますので、鳥類や哺乳類に属する野生動物を捕獲等することは、鳥獣保護管理法8条に違反する行為となります(旧法では、ネズミ、モグラ類、海棲哺乳類を除いたものが法の対象とされていましたが、平成14年改正により、これらも「鳥獣」に含まれることとなりました。)。

2 駆除が可能な動物ないし鳥獣保護管理法の適用が除外される野生動物
 上記のとおり、鳥類及び哺乳類を駆除することは、原則として鳥獣保護管理法に違反します。
 では、家に出たネズミも駆除できないのでしょうか。
 この点、鳥獣保護管理法の適用が除外される野生動物が定められています。
 鳥獣保護管理法80条1項は、「この法律の規定は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるものについては、適用しない」と定め、それを受けて「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則」78条は、「法第八十条第一項の環境省令で定める鳥獣のうち、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣は、次の表に掲げる鳥獣とする」として、「ネズミ科」の「ドブネズミ(ラトゥス・ノルベギクス)、クマネズミ(ラトゥス・ラトゥス)、ハツカネズミ(ムス・ムスクルス)」が規定されているので、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミを駆除しても、鳥獣保護管理法8条に違反しないこととなります。

 また、イルカ、オットセイ、クジラ等については、他の水産関係法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣として、鳥獣保護管理法の対象外とされています。

3 鳥獣保護管理法(8条)に違反して野生動物を捕獲等した場合の刑罰
 鳥獣を許可なく捕獲等した場合、鳥獣保護管理法8条に違反することになります。
 鳥獣保護管理法8条に違反した場合、同法83条に罰則が規定されており、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処せられる可能性があります(同法83条2項に未遂処罰の規定があり、実際に捕獲等していなくても未遂犯として処罰される可能性があります。)。

以上

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★