コラム 改正刑法④「執行猶予期間経過の効果に関する規定の新設」
2022年9月
弁護士 虫本良和
令和4年6月13日、刑法等の一部を改正する法律(以下「本法」という。)が成立しました。本法の主な内容として、執行猶予期間経過の効果に関する規定の新設があります。
この規定の新設によって、執行猶予付きの判決を受けた人が、さらに罪を犯してしまったという場合に、前刑の執行猶予が取り消される可能性が高くなりました。
これまでは、執行猶予の期間中にさらに罪を犯してしまったという場合でも、新たに犯した罪の裁判で有罪判決が確定する前に執行猶予期間が満了した場合、前刑の執行猶予は取り消されずにすむというケースが多くありましたが、今回の改正によって、前刑の執行猶予が取り消され、長い期間の服役を余儀なくされるというケースが増えることになりそうです。
具体的には、執行猶予期間が経過する前に新たな罪を犯し、かつ、執行猶予期間内にその罪について起訴されていれば、新しい罪についての判決が確定する前に執行猶予期間が満了した場合でも、前刑の執行猶予を取り消すことができるという規定が新設されました(改正刑法27条2項)。
ちなみに、新たに犯した罪について、拘禁刑以上に処せられた場合は、執行猶予は原則「取り消さなければならない」(必要的取消)とされ(同4項)、罰金刑に処せられた場合は、「取り消すことができる」(裁量的取消)とされています(同5項)。
いわゆる隠語・俗語ですが、執行猶予のことを、判決後も「ついて回る」といったイメージ(諸説あるようですが。)からか、「弁当」と呼ぶ人がいます。そこから、執行猶予期間を満了させるために裁判を引き延ばすことについて「弁当切り」などと呼ばれることもあるようです。しかし、今回の法改正は、この「弁当切り」を難しくさせるものといえそうです。
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★