お知らせ・ブログnews & blog

千葉県千葉市の弁護士事務所 法律事務所シリウス > お知らせ・スタッフブログ > ブログ > イギリス刑事法紹介①~起訴前の勾留期間~

イギリス刑事法紹介①~起訴前の勾留期間~

2022.06.24ブログ

 イギリスの刑事手続においては、逮捕された被疑者の警察署における起訴前の勾留期間は、原則として、被疑者が警察署に到着した後24時間が上限とされています(Section 41, Police and Criminal Evidence Act 1984)。取調べ等のための必要性に合理的根拠が認められる場合には、警察内部の管理者の許可を得て、12時間の延長が認められます。
 36時間を超える起訴前の勾留が必要な場合、一定の要件を満たす場合には、裁判所の令状発付を得て、最大96時間まで勾留期間を延長することが可能とされています(Section 43)。ただし、実務上、36時間を超えて勾留期間が延長されることは稀であり、2020年に裁判所への令状発付が求められたケースは439件に過ぎません(UK Home Office, ‘Police powers and procedures, England and Wales, year ending 31 March 2020 – Second Edition’ (Home Office Statistical Bulletin 31 20) 40)。
 なお、一定のテロリスト犯罪については、最大で2週間の起訴前勾留が認められることがあります(Schedule 8, Terrorism Act 2000)。
 
 このように、イギリスにおける起訴前の勾留期間は、日本の刑事手続と比べて明らかに短くなっています。強制的な身体拘束に伴う人権侵害の重大性や無罪推定の原則が適切に反映されているといえます。逆に、比較的軽微な事件でも23日間の起訴前の身体拘束が安易に認められる日本の刑事実務の異常性が際立ちます(イギリスでは、テロリストですら、起訴前の勾留期間は最大で14日間です。)。
 日本における虚偽自白によるえん罪やそれを防ぐための弁護人の取調べ立会権などの議論に際しては、根本的には、長期間の起訴前勾留を許す現行刑事訴訟法の問題点に目を向ける必要があるように思います。 

以上

※本稿におけるイギリス法の説明は、イングランド及びウエールズ圏内において適用される法規制に関するものです。

 

弁護士/英国弁護士 中井淳一  
https://japanese-lawyer.com/  

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★