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刑事裁判の在廷義務と退廷後の刑事裁判手続

2022.04.29ブログ

弁護士 菅 野  亮  

1 被告人の在廷義務
 刑事訴訟法288条第1項は、「被告人は、裁判長の許可がなければ、退廷することができない。」と定めています。
 この規定は、被告人の在廷義務を定めたものとされ、被告人が裁判長の許可なく退廷しようとすれば、裁判長から在廷命令が発せられ、強制力により在廷を強制されることになります。
 裁判長の許可無く被告人が退廷した場合、被告人が法廷にいないまま審理・判決をすることができるとされています(刑訴法341条「被告人が陳述をせず、許可を受けないで退廷し、又は秩序維持のため裁判長から退廷を命ぜられたときは、その陳述を聴かないで判決をすることができる。」)。また、被告人の刑事裁判の在廷に関しては、被告人が出頭を拒否した場合においても、被告人が正当な理由もなく出頭しない場合には、「裁判所は、被告人が出頭しないでも、その期日の公判手続を行うことができる」とされています(刑訴法286条の2)。

2 被告人退廷後の刑事裁判手続
 裁判長は、法廷の秩序を維持するため相当な処分をすることができます(刑訴法288条2項)。
 裁判長は、被告人や傍聴人が、裁判長の指示に従うことなく、大声で不規則発言等を繰り返す場合には、法廷の秩序を維持するために、発言禁止命令や退廷命令を出すことができます(被告人が暴力を振るったり、逃亡を企てた場合には、被告人について法廷で身体拘束を行うことができます。刑訴法287条)。
 被告人に退廷を命じた場合には、被告人が法廷にいない状態で審理を進めることができます(刑訴法341条)。
 弁護人としては、被告人不在のまま裁判を継続することは望ましくありませんので、休憩を求め、退廷を命じられた被告人と協議をするなどして、どのように対応をすべきか検討することになります。

3 弁護人の在廷義務と刑事裁判
 検察官および弁護人に対しては、刑訴法278条の2により、「裁判所は、必要と認めるときは、検察官又は弁護人に対し、公判準備又は公判期日に出頭し、かつ、これらの手続が行われている間在席し又は在廷することを命ずることができる」とされています。
 実際の事件で弁護人に対して在廷命令が発令されることは多くありませんが、「刑訴法278条の2第1項による公判期日等への出頭在廷命令に正当な理由なく従わなかった弁護人に対する過料の制裁を定めた同条の2第3項は,訴訟指揮の実効性担保のための手段として合理性,必要性がある」などと判断された事例(最高裁平成27年5月18日・最高裁判所刑事判例集69巻4号573頁)もあり、全くないわけではありません。

 必要的弁護事件について、弁護人が裁判長の許可なく退廷した場合に訴訟手続を続行することができるかどうかが問題となった事例で、最高裁は、「いわゆる必要的弁護事件において、裁判官が公判期日への弁護人出頭確保のための方策を尽くしたにもかかわらず、被告人において弁護人在廷の公判審理ができない事態を生じさせるなど判示の事実関係の下においては、当該公判期日については、刑訴法二八九条一項の適用がなく、弁護人の立会いのないまま公判審理を行うことができる」と判断しました(最高裁平成7年3月27日判決・最高裁判所刑事判例集49巻3号525頁)。

以上

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★