イギリスにおける性犯罪の起訴率
2021.06.23ブログ
近年のイギリス刑事司法における顕著な問題としてたびたび議論されているのが、性犯罪における極めて低い起訴率です。2020年3月までの1年間で、警察に記録された強姦事件のうち、起訴に至ったのはわずか1.4%となっています。このような現状に対しては、被害者側からの強い批判があり、メディアなどでも警察・検察の深刻な問題点として取り上げられています。
検察(CPS)が2016年に強姦事件の公判における有罪率の数値目標を60%と設定したことで、より多くのケースで起訴が避けられてきたのではないかと議論されています。また、長期的には、刑事司法分野に対する政府の支出削減が原因であるとの指摘があります。2019~2020年の司法分野の政府予算は10年前と比較して25%と減少しており、結果として、検察(CPS)の職員数も大きく減少しています。こうした政策が起訴率の低下に影響していると考えられています。
また、刑事裁判実務との関係では、性犯罪の被害者に対する反対尋問を事前に実施して録画する運用が試行されており、今後の動向が注目されます。
https://www.bbc.co.uk/news/uk-48095118
弁護士 中井淳一
★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★