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過去の逮捕歴に関するインターネット情報の削除を求めることはできますか③(削除を求める裁判以外に身を守る方法はないのでしょうか)

よくあるご質問刑事事件

1 検索サービス事業者に対する任意の措置を求める方法
 GoogleやYahoo!等の検索サービス事業者は,インターネット上に拡散された名誉権等侵害のおそれのある個人情報が検索結果や検索候補に表示されないようにする措置に任意に応じてくれることがあり,そのような任意措置を申請するウェブページをそれぞれ設けています。
 例えばGoogleは,そのウェブサイト上で,「アダルトコンテンツ」,「Googleポリシー違反」,「法律違反」,「著作権侵害」が認められる個人情報等について申請があれば削除すると公表しています。ですから,過去の逮捕歴に関する情報であっても,仮にそれが名誉毀損等の法律違反に該当するような表現方法であると判断されれば,任意に削除の措置を措置をとってもらえる可能性があります。なお,Googleでは,「法律違反」については,削除リクエストの審査をGoogleに依頼すれば,審査にかけ,コンテンツへのアクセスをブロック,制限又は削除するかどうかを検討するとも公表しています。
 また,Yahoo!(ヤフー株式会社)は,そのウェブサイト上で,2015(平成27)年3月30日付け「検索結果の非表示措置の申告を受けた場合のヤフー株式会社の対応方針について」を公表し,①プライバシー侵害に関する判断,②検索結果の表示内容自体の非表示措置に関する判断,③プライバシー侵害とされる情報が掲載されているウェブページへのリンク情報の非表示措置に関する判断について,一定の基準を示しています(詳しくは上記文書をご覧ください。)。その上で,その基準に従った検索結果の非表示措置等を採る方針を示しています。
 このような検索サービス事業者に対する任意措置の申請は,各事業者のウェブサイト上でのやりとりが可能であるなど比較的簡便であり,裁判上の請求に比べて費用もかからないので,まずは試してみる価値が十分あります。
 なお,総務省のホームページ(「インターネット上の違法・有害情報に関してお困りの方へ」)でも,検索サービス事業者(サイト管理者)に対する削除の依頼をすることが可能であることを明示した上で,そのための相談窓口(違法・有害情報相談センター)も設置しているので,こちらへの相談も有効と思われます。
 特に,総務省ホームページには,検索サービス事業者が,権利侵害情報が掲載されているサイト削除に関する専用のフォームなどを用意していない場合であっても,プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討委員会が策定した送信防止措置手続の書式を活用して削除依頼を行うことができることが紹介されているので参考になります。

2 情報が拡散されないための予防策
 法律事務所シリウスでは,刑事事件を受任するに当たっては,当該事件が新聞やネットニュース等で報道されているかどうかを確認し,報道されていた場合にはその内容を吟味した上で,必要に応じて,依頼者(被疑者・被告人)やその家族に対し,情報が拡散されないための予防策を採ることをお勧めしています。
 例えば,当該報道について電子掲示板(2ちゃんねるなど)上にスレッドが立ち上がり,無責任な書き込みが蔓延して当該情報が拡散され始めた場合には,依頼者やその家族からFacebook等のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用の有無を確認し,その使用状況に照らして非公開措置等を行うよう助言しています。
 というのも,刑事事件に関する報道においては,通常,被疑者の住所・職場や家族の氏名等までは公表されないのですが,電子掲示板にスレッドが立ち無責任な書き込みが始まると,当該掲示板に,興味本位でSNSから得た被疑者の住所等の個人情報が拡散されてしまい,それがデジタルタトゥー被害を大きくしてしまう可能性があるからです。
 なお,他人の顔写真を無断でTwitterにアップロードした行為に対しては,東京地方裁判所平成30年9月27日判決が,著作権,プライバシー権及び自己の容ぼう等をみだりに公表されない人格的権利(肖像権)の侵害を認めて約50万円の損賠賠償を命じた裁判例もありますので,SNSから得た顔写真等の無断転用に関しては,このような裁判例も参照しながら,発信者に強く削除を求めて行くなどの対処を進めていくことになろうかと思います。
 また,上記のような顔写真の無断転用等の度が過ぎる拡散行為が確認された場合は,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条に基づき,プロバイダに対する発信者情報開示請求を行うことも検討します。これを行うことにより,将来の訴訟等に備えた準備を行うことができる上,仮に発信者情報が開示されなくても,この手続の中でプロバイダから発信者に対し「意見照会」が行われることから(同法4条2項),訴訟リスクを察した発信者が自ら上記顔写真等の削除を行ってくれることが期待できるからです。

3 改姓・改名
 デジタルタトゥー被害者の中には引越や改姓を考える方もいます。
 しかし,これは,これまで築いてきた社会との関係を断ち切ることになりますし,費用等の問題でなかなか困難であるのが実情です。
 改姓に関しては,妻と離婚し,妻子を妻の旧姓に変更することで,少なくとも妻子だけは無責任な情報拡散の被害から守りたいという切実な御相談もあり,デジタルタトゥー被害の深刻さを物語っています。
 さらに一歩進んで,デジタルタトゥーの被害から身を守るべく名の変更を行うことも考えられますが,これについては,家庭裁判所の考え方が旧態依然としており困難であるのが実情です(詳しくは,当ホームページブログ「名の変更手続きが,再犯防止支援の要請に追い付いていないと危惧される実情について」をご覧ください。)

2021年4月30日

★千葉市の弁護士事務所『法律事務所シリウス』より★